頭木弘樹さんよりご著書を恵投いただきました。
これぐらいの距離感で、外国の作家を紹介する本がもっとでると
専門書への橋渡しになっていいのですが(たとえばナボコフでも)。
頭木さん、まことにありがとうございました。
久しぶりに『UP』に寄稿させていただきました。
「遠読以後――デジタルヒューマニティーズと文学研究」『UP』2017年2月号、12―19頁。
『遠読』を出版して以降、聞かれることも あったDHについて、
「その後どうなっているのか?」という観点から、
比較的最近の研究動向について書いています。
以下のような研究について紹介させていただきました。
※以前、山形浩生さんがcakesの書評で、「さて、文学どうする(ってどうもしないだろうけど)」と評してくださったことへのフォローに多少なっているといいのだが。
yakusunohawatashi.hatenablog.com
※『UP』は東京大学出版会が刊行している雑誌で、大学生協・大型書店などにおいてあることがあります。定期購読も可能です。
あまりこういうのやると「自己宣伝がひどい」と言われますが…
(実際、本当に活躍している学者はふりかえる暇もなく業績を出しつづけていますし、必然的に自分の業績をいちいち数えたりしないものでしょう。しかし、そんな数少ないすぐれた学者でも、さまざまな事情により数えざるをえなくなっているのが現状です)
2016年は論文五本、共訳書二冊(あとエッセイ一本)でした。
ぱっと見、論文が多いですが、これはむしろ2016年以前からやっていた仕事がまとまったためたまたまですね。
モレッティ『遠読』は2014年秋に企画をもちこみ、実際に翻訳作業をはじめたのは2015年3月。
『ナボコフの塊』も2014年秋に企画をもちこみ、実際に作業をはじめたのは2015年3月ぐらいですね。
「ナボコフとエリオット」は、日本T.S.エリオット協会の2015年秋のシンポジウムの草稿をあらためたもの。
西脇順三郎論は2015年6月に白百合女子大のオムニバス講義でしゃべったことから発展して新たに書いたもの(これはほぼ書き下ろしです)。
(呼んでいただいた愛知学院大学・山口先生、白百合女子大学・海老根先生ほかに感謝です)
また、『文学』特集「世界文学の語り方」も、2014年末から月一~隔月で研究会をしていたのが形になったもの。
しかし、なかでも一番時間がかかってしまったのがNabokov and Lauglinですね。これは2012年からしていた調査をまとめたもので、書きはじめたのが2013年で、刊行されるまで3年ぐらいかかってしまいました。
そのこともあって、個人的には思いいれが深い論文なのですが、(英語ということもあって)じつはほとんど読まれてない(??)論文ですね。まあ、どうでもいいですが……
今年のアウトプットに勝手に順位をつけると
1 "Nabokov and Laughlin: A Making of an American Writer"
2 『ナボコフの塊』
3 「書き直し」としての自己翻訳――ノーベル文学賞候補西脇順三郎の「神話」
ですね。
『遠読』はさいわいなことに(売れゆきはともかく)、多くの人にメンションいただき、書評もたくさん書いていただいたのですが(ありがとうございます!)、『ナボコフの塊』はマニアックすぎたのか、書評は(山形さんのぞき)ゼロですからね。二か月連続で刊行したのも悪かったのだと思いますが、私は刊行予定に口を出せる立場ではなく、編集者が出してやると言うときに出すしかない(笑)。
また、こうしてみると、自分の仕事がナボコフ関係と世界文学関係にきれいにわかれてしまったなあ、と。この辺、このまま交わらない並行関係でいくのか、どっちかに吸収されていくのか、わからないですが…
と、無意味なことを書いているうちに2016年も終わってしまいました。2016年はインプットの年にしようと思ったのですが、私にしては出版が多くあまり…
2017年はがくっと出版が減るはずなので、今年こそはインプットをしたいと思います。
訳者の山辺弦さんから訳書をご恵投いただきました。
どうもありがとうございます。
本書はシリーズ「フィクションのエル・ドラード」の一冊として刊行されているようです。水声社のページで今後のラインアップも見ることができます。
blog 水声社 » Blog Archive » 8月の新刊:《フィクションのエル・ドラード》『八面体』
「いまのご時世」で、これだけ手厚いシリーズが刊行されるというのは、ちょっと(ほかの外国文学を研究している身からすると)考えられないぐらいすばらしいことだと思います。
(ちなみに訳者の山辺さんは今後もまだ二冊(インファンテ『気まぐれニンフ』とピニェーラ『圧力とダイヤモンド』)の翻訳予定があるようです。)
また、水声社だけでなく、松籟社も「創造するラテンアメリカ」というシリーズを刊行していますね。ほかの出版社からももちろん出ています。
なぜラテンアメリカ文学の紹介がここまでされるようになっているのかには、様々な要因があるのでしょうが(たとえば、未訳の作品で翻訳に値する傑作が多いということが大前提ですが)、一番は40代中盤~50代前半ぐらいの脂ののった研究者が適切なポジションについて学会を指導し、その下につづく30代~20代の優秀な若手研究者に仕事をまわすというサイクルができているからではないか、と外からは見えます。
このことは、ラテンアメリカ研究業界が、比較的歴史が浅く、全体として若い組織だからできているようにも思えます。学会が高齢化すれば、メリットもありますが、かえって若手は自由に動きづらくなるということもあります。
また、スペイン語教育の需要が今後も当分は少なくなさそうなのもいい点でしょう。ポストをえるかえないかの若手が最低限の衣食住ができない状態では、研究や(ほぼ収入にならない)文芸翻訳はできません。ここも微妙なさじ加減があり、かといって早めに常勤のポストを獲得できる環境でも、そのポストが非常に忙しかった場合、やはり研究・翻訳はやりにくくなるでしょう。
こうした組織的・網羅的な研究紹介がおこなわれている現状を見ると、もはや日本でラテンアメリカ文学のステータスは、たとえば現代ドイツ文学や現代ロシア文学を凌駕していると言ってもいいかと。
本書の訳者あとがきによれば「スペイン教育・文化・スポーツ省からの出版助成」によるもの、とのことですが、こういった後押しがあるのも重要ですね。
ロシアとかでもあるにはあるみたいなのですが、日本で使われているのをほぼ見たことがありません…おそらくあまり使いやすいもののではないのかと。
「JMOOC(日本オープンオンライン教育推進協議会)」というオンライン講座で一部授業を担当しています。
gaccoのウェブサイト上から見ることができるようです。
「文化翻訳」をテーマにした複数の教員によるオムニバス講義(一回15分程度)で、
私は第三週のマンガの回の一部を担当しました。
コミックビーム編集長の岩井好典さんに、漫画の翻訳や、小説の漫画化について、三回分インタヴューしています。
岩井さんは超敏腕の編集者として、数々の名作を生みだしてきた方ですが、あの漫画やあの漫画の裏話なんかもいろいろとうかがっております(尺の関係で削らなくてはならなかったところもあり…残念だったのですが…)。
登録が必要ですが、だれでも視聴でき、かつ無料です。
現在は登録受付中で、講座自体は来年1月11日からはじまる予定です(ただし、一定期間後受講不能になりますのでご注意を)。
大学もいろいろなことをやっていかなくてはならない時代ですね。