訳すのは「私」ブログ

書いたもの、訳したもの、いただいたものなど(ときどき記事)

小川公代、村田真一、吉村和明編『文学とアダプテーション――ヨーロッパの文化的変容』春風社

奥彩子先生からご共著書のご恵投いただきました。

 

小川公代、村田真一吉村和明編『文学とアダプテーション――ヨーロッパの文化的変容』春風社

 

 

 

 

 

最近、「アダプテーション」が流行なのでしょうか。

先日は波戸岡先生の『映画原作派のためのアダプテーション入門――フィッツジェラルドからピンチョンまで』(彩流社)を読んだところでした。

 

奥先生、どうもありがとうございました。

 

明日か明後日、来年の刊行予定をアップしたいと思います!

日本ナボコフ協会学会誌『KRUG』10

中田先生と編集を担当した日本ナボコフ協会の学会誌『KRUG』の10号が刊行されています。

 

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特別講演(Special Lecture)
富士川義之ナボコフと英国の伝記文学」 1


書評(Book Review)
深澤明利 ウラジーミル・ナボコフ『見てごらん道化師(ハーレクイン)を!』(メドロック皆尾麻弥訳) 15
諫早勇一 ウラジーミル・ナボコフナボコフの塊――エッセイ集1921-1975』 (秋草俊一郎編訳) 17
中田晶子 Leona Toker, Nabokov: The Mystery of Literary Structure 22
若島正 Marijeta Bozovic, Nabokov’s Canon: From Onegin to Ada 28
三浦笙子 Robert Roper, Nabokov in America: On the Road to Lolita 32

研究発表要旨(Synopsis)
Vyatcheslav Bart, An Artist of Thought: Nabokov as Anti-Critic in Light of Mikhail Epstein’s “Philosophy of the Possible” 39


雑録 (Miscellany) 73

 

一冊1000円でバックナンバーもふくめ頒布もしております。お問い合わせは事務局までお願いします。

 

The Nabokov Society of Japan

ナボコフのアーカイヴを訪ねて⑩ プリンストン大学ファイアストーン図書館

アーカイヴ紀行の10回目です。

今回紹介するのは、南部より一転、プリンストン大学です。

ニューヨークから電車で南にいったプリンストンに位置する大学です。

メトロポリスの喧騒を離れ、町は静かで、キャンパスはすばらしく英国風です。

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こんなところで勉強出来たら最高ですね。

 

そのメインライブラリーであるファイアストーン図書館のアーカイヴには、

ナボコフ関係の資料も多少収蔵されています。

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(行った当時は工事改修中でした)

 

ひとつは、ヘンリー・ホルト社の編集者をしていた、モダニズム詩人アレン・テイトとナボコフの書簡です。

 

Allen Tate Papers (C0106) -- Series 2: Correspondence -- Subseries 2C: General Correspondence -- Nabokov, Vladimir

 

1947年、ナボコフは英語第二作『ベンドシニスター』をヘンリー・ホルト社より出版しました。その際、社がテイトをつうじて提示したアドヴァンスは2000ドルという、当時のナボコフにとっては非常な高額でした。

 

このとき、ナボコフはウィルソンに「テイトに低頭!」と書き送っているほどです。

 

テイトとナボコフのやりとりは、テイトがホルトをじきにやめてしまったこともあって、実はそれほど量があるわけではないですが、ナボコフがテイトに非常に恩を感じていたことがわかります。

 

なお、ここの図書館はナボコフが翻訳の際に参照したアレクサンドル・プーシキン『エヴゲーニイ・オネーギン』を2010年に購入し、それを全ページ、スキャンしてデジタル・アーカイヴで公開しました。

 

blogs.princeton.edu

blogs.princeton.edu

チュッチェフの詩集もあります。

 

こちらはいながらにしてナボコフの書きこみを見ることができるわけです。

今後はこのようなデジタル化と情報公開が進めばいいですね。

 

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なお、プリンストン大学の美術館は(アメリカの金持ちの私立大学によくあるように)非常に充実しているので、それだけでも訪問の価値があります。

 

 

資料の充実度 ★

使いやすさ  ★★★★★

キャンパスの英国度 ★★★★

書評「ナボコフ・コレクション」全五巻、新潮社(『週刊読書人』2017年12月9日号)

週刊読書人』2017年12月9日号に、

新潮社「ナボコフ・コレクション」について書きました。

 

下記のリンクから全文を読むことができますので、ぜひお読みください。

 

dokushojin.com

ウラジーミル・ナボコフ「密偵」(冒頭部)『新潮』2018年1月号、188-191頁。

発売中の『新潮』2018年1月号に

ナボコフの「密偵」の冒頭部を訳しました。

 

密偵」は以前は『目』として白水社から小笠原豊樹訳で刊行されていた作品です。

 

今回、『新潮』では特集を組んでいますが、

先月の『すばる』の「ヴェラの手紙」とは違って、

すべてコレクションに収録される(された)内容になっています。

その意味では「ここでしか読めない」という貴重さはありません。

 

 

 

 

文学とコンピュータが出会うとき――遠読、量的分析、デジタルヒューマニティーズ

1月13日に「文学とコンピュータが出会うとき――遠読、量的分析、デジタルヒューマニティーズ」という題の講演がおこなわれます(詳細ポスター)。ふるってご参加ください。

 

コンピュータによる創作が注目される昨今ですが、小説を読む道具としてもコンピュータは使われています。講演ではコンピュータよる創作、精読に対しての遠読という概念、文学の量的分析や、北米でのデジタルヒューマニティーズについて例をあげてご紹介します。

 

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ナボコフのアーカイヴを訪ねて⑨ テキサス大学オースティン校ハリーランサムセンター

 アーカイヴ紀行の9回目です。

 

今回は東海岸から大きく飛びまして、テキサス大学オースティンのハリーランサムセンターをご紹介します。

 

オースティンはテキサスの州都、テキサス大学オースティン校は名門として知られます。

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 おなじみの州議事堂。

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広いキャンパスですが、この近くで70年前に乱射事件があったんですよね。

そのアーカイヴであるハリーランサムセンターは、アメリカでも有数の近現代の作家のコレクションを持っています。特に国内外問わず20世紀の作家に非常に強い印象。

  

<関連>

 米・ハリーランサムセンター、ノーベル賞作家ガブリエル・ガルシア・マルケスのアーカイブをデジタル化 | カレントアウェアネス・ポータル

 米・テキサス大学ハリーランサムセンターが所蔵するノーベル賞作家カズオ・イシグロ氏のアーカイブ(記事紹介) | カレントアウェアネス・ポータル

 

ハリーランサムセンターの外観はこんな感じです。

 

 

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閲覧室はこんな感じ。

 

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センターでは幅広く作家関連資料を収集しています。

たとえば、ジョン・ファウルズが生前使っていた机が飾られていました。

 

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ナボコフがアメリカではじめて会った編集者のひとり、 『アトランティック・マンスリー』のエドワード・ウィークスとの書簡もあります。

 のちにウィークスは著書にナボコフの印象を書きとめました。

 

 

 

ほかにもクノップフ、ダブルデイなど出版社とのやりとりが多く収蔵されています。そのため、書簡だけでなく、『プニン』や『透明な対象』のゲラ刷り、元原稿(『マイ・ディア・プニン』という題のもの)も見ることができます。伝説的な編集者(まだ存命ですが)ジェイソン・エプスタインとの書簡の一部もここに収められています。

 

 

 

そうかと思えば、1930年代のロシア語書簡や、いとこの作曲家ニコラス・ナボコフとの書簡の一部も収められています。

 

オースティンは観光地ではないですが、大学の美術館は圧巻ですし、少し町はずれに行くと、O・ヘンリーが住んでいた家なんかもありました。

 

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なお、センターの一階には展示スペースがありますが、訪問した時には『風と共に去りぬ』展が開催されていました。

 

オースティンは治安は普通そうでしたが、街が結構だだっぴろく、

移動が面倒なので、多少高くついても大学近くに宿をとったほうがよいです。

この手の調査は長距離移動、時差ボケ、食事事情などに苦しめられることが多いので、

ストレスは極力避けたいところです。

これはアーカイヴ調査の鉄則のひとつでもありますが……

 

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AT&Tホテルはセンター至近で、米国で滞在したホテルの中でも最高に近かった。)

 

資料の充実度 ★★★★

使いやすさ  ★★★★★

お得度 ★★★★★