訳すのは「私」ブログ

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マシュー・レイノルズ『翻訳――訳すことのストラテジー』書評まとめ

このエントリにマシュー・レイノルズ『翻訳――訳すことのストラテジー』の書評をまとめておきます。

書評をくださったみなさま、どうもありがとうございました。 

 

鴻巣友季子

鴻巣友季子さん『毎日新聞』2019年3月17日

 「政治力学にも切りこむ」

mainichi.jp

 

山田文さん『週刊読書人』2019年7月12日号

「翻訳とは創造的で豊かな営み」

 本書の翻訳自体が、著者の提示する翻訳理解のよき実践例となっているのもうれしい。翻訳関係者のみならず、ことばや異文化交流に関心を持つ人に広く読まれてほしい一冊である。

 
北代美和子さん『通訳翻訳研究への招待』21号、2019年。
 多くの人は、母語と外国語の2言語を話す人間ならだれでも両方向の翻訳・通訳が可能だと思いがちだし、通訳者を介しさえすれば自分の発言が外国語になって100パーセント伝えられると信じているだろう。このような誤解から生まれる齟齬を回避するためにも、一般社会の側に「翻訳・通訳」について一定のコンセンサスがあることが望ましいのではないだろうか?その意味で、本書『翻訳訳すことのストラテジー』のようなコンパクトな翻訳(学)の入門書が世に出されることは、翻訳学というひとつのdisciplineのみならず、社会全体にとっても有益だと思われる。

 

 

 荒木詳二先生『世界文学』130号、2019年、72-74頁。

一言でいえば、本書は翻訳に対するさまざまな疑問に答える、質の高い入門書だといえよう。 

 

 

 

マシュー・レイノルズ『翻訳――訳すことのストラテジー』ソクラテスによる紹介

書籍紹介サイト「ソクラテス」でレイノルズ『翻訳――訳すことのストラテジー』が紹介されました。

 

「グーグル翻訳があれば外国語学習はもう必要ない?」という刺激的な見出しで

本書の一部を紹介していただいています。

 

よろしければご覧ください。

 

socrates.media

https://socrates.media/2019/03/14/4155/

巽由樹子『ツァーリと大衆――近代ロシアの読書の社会学』東京大学出版会

巽由樹子先生からご恵投賜りました。ありがとうございます。

巽由樹子『ツァーリと大衆――近代ロシアの読書の社会学東京大学出版会

 

最近読書史や文化史に興味をもっていることもあってか、たいへん面白く読みました。

 

革命前ロシアでインテリゲンツィアともナロードともちがう読書する「中間層」がどう生まれたのかを大量の図版も使いながら描いています。

 

各地につくられた図書館での利用者と図書館員の会話の記録とかが残っているのもおもしろいですし、『二―ヴァ』が自分の本を読んで地方住みなのに博識になったおじさんのすがたとかを伝えているのもわざとらしくていいですね。

 

このようなメディア研究は日本近代文学の分野でもさかんなので、文学研究とコラボするとなにか生まれそうです。

 

巽先生、どうもありがとうございました。

 

www.utp.or.jp

 

 

マシュー・レイノルズ『翻訳――訳すことのストラテジー』冒頭試し読み公開

マシュー・レイノルズ『翻訳――訳すことのストラテジー』の冒頭四ページを試し読みできるページをつくってもらいました。

 

版元のページより、試し読みできます。

 

www.hakusuisha.co.jp

 

直リンクはこちら。

 

https://www.hakusuisha.co.jp/files/sample/09685a.pdf

 

わる言語

翻訳ってなんだろう?

きみは学校にいるホワイトボードには外国のことばがならんでいる。課題はその文章理解して、英語になおすことだ。先生しかめっつら。時計がカチコチっている。陽部屋しこんでいるまちがえたらられるこのテストは、翻訳という。

 

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今野喜和人編『翻訳とアダプテーションの倫理――ジャンルとメディアを越えて』(春風社)

今野喜和人編『翻訳とアダプテーションの倫理――ジャンルとメディアを越えて』(春風社

中村ともえ先生より賜りました。どうもありがとうございます。

 

目次|contents

はじめに
第一部 翻訳の倫理

第一章 馴化された翻訳と澁澤龍彦―法律、政治と文学【スティーブ・コルベイユ】
第二章 ポール・ヴァレリーの翻訳体験をめぐって―ウェルギリウス『牧歌』仏語韻文翻訳から『樹についての対話』執筆へ【安永愛】
第三章 ミラン・クンデラと自己翻訳―フランスを介した「一般化」から読み解く作者の意図【ローベル柊子】
第四章 削除と伏字―谷崎潤一郎と窪田空穂の『源氏物語』現代語訳【中村ともえ】
第五章 事態把握と翻訳―認知言語学から見た逐語訳とアダプテーションの間【大薗正彦】
第二部 アダプテーションの倫理
第六章 法の侵害か、モラルの侵犯か―映画『ノスフェラトゥ』と原作『ドラキュラ』をめぐる考察【花方寿行】
第七章 芥川龍之介黒澤明貸借対照表―映画『羅生門』におけるアダプテーション再考【今野喜和人】
第八章 二つの「伊豆の踊子」―翻案(アダプテーション)としての映画【田村充正
第九章 ヌマンシアアダプテーションローマ帝国からセルバンテスそしてナショナリズムへ【大原志麻】
第三部 アダプテーション研究の可能性
第一〇章 ジェスの「トランスレーションズ」―あるいは創造的な共謀へのいざないについて【山内功一郎】
第一一章 ル・ボン「民族心理学」の東アジアにおける受容―李光洙夏目漱石魯迅を中心に【南富鎭】
第一二章 古代庭園文化の受容と翻案―寝殿造庭園と「名所」の発生【袴田光康】
第一三章 もの言う農民作家―閻連科の小説に見る倫理【桑島道夫】
第一四章 動物と私のあいだ―中上健次『熊野集』「熊の背中に乗って」「鴉」【渡邊英理】
執筆者紹介
索引

 

さっそく、

ローベル柊子「ミラン・クンデラと自己翻訳―フランスを介した「一般化」から読み解く作者の意図」


中村ともえ「削除と伏字―谷崎潤一郎と窪田空穂の『源氏物語』現代語訳」

を拝読しました。

 

ローベル先生のものはクンデラの自己翻訳をあつかったものです。

「一般化」の功罪の「功」の部分に言及されていますが、ややその部分が短く、通常の翻訳とどうちがうのか、それはほかの文化圏でも言えないのか(たとえばチェコ→英の翻訳では)という点が気になりました。

 

中村先生のものは戦前の源氏翻訳をあつかったもので、削除することの倫理的な問題についてです。「わいせつ」な部分を削除することで訳者の主体性が問題になるという点で、期せずして、第一章の澁澤龍彦サド裁判をあつかった章と響きあうものになっています。

 

中村先生、どうもありがとうございました。

 

 

www.shumpu.com

マシュー・レイノルズ『翻訳――訳すことのストラテジー』目次公開

先日刊行されたマシュー・レイノルズ『翻訳――訳すことのストラテジー』の目次を公開いたします。

 

[目次]
訳者まえがき

i
交わる言語
翻訳ってなんだろう/言語と言語のあいだの中立地帯(ノーマンズランド)/外交翻訳/クラウド翻訳/数えてみましょう

ii
定義
翻訳(トランスレーション)を翻訳する/別のことば/翻訳が言語をつくる/あらゆるコミュニケーションは翻訳か?

iii
ことば、コンテキスト、目的
翻訳はことばの意味を訳すのか?/コンテキストのなかのことば/目的/字幕、戯曲、広告の目的

iv
かたち、アイデンティティ、解釈
アイコン/コミックスと詩形/アイデンティティ/ひとつの解釈

v
力、宗教、選択
解釈の帝国/遅効性翻訳/神のことば/聖なる本/さいなむ検閲/翻訳の重責/有力な選択肢

vi
世界のことば
ブック・トレード/公式ルート/グローバル・ニュースのハイウェイ/機械、規則、統計/メモリ、ローカリゼーション、サイボーグ/クラウド翻訳、非正規流通(ブートレッグ・トレイル)、グローカル言語

vii
翻訳的文学
国民文学/多言語創作/トランスラテラチャー/翻訳の劇場/ふたつの未来

2冊目以降はこちら
日本の読者むけの読書案内
訳者解説
引用クレジット
図版一覧
索引

 

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漫画からコミックスへの翻訳をあつかったページはこんな感じです。

 

 

マシュー・レイノルズ『翻訳――訳すことのストラテジー』白水社

 マシュー・レイノルズ『翻訳――訳すことのストラテジー』(白水社)が、刊行になりました。

翻訳について考える上で、さまざまなヒントが詰まっている本です。

よろしくお願いいたします。

 

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「翻訳」という事象の広がりへ

最新の翻訳研究(トランスレーション・スタディーズ)ではなにが論じられているのか? これ1冊でひととおりわかる! やさしい入門書。

「バベルの呪い」は呪いなのか?

最新の翻訳研究(トランスレーション・スタディーズ)ではなにが論じられているのか? 本書では、「グーグル翻訳は原文の等価物か?」「『直訳』『意訳』という二分法は正しいのか?」といった身近な問題から、文学作品が翻訳を通じて新たな力を獲得しうるという「翻訳の詩学」と著者が呼ぶものまで、「翻訳translation」という事象が含む論点の広がりが一望できるようになっている。
わたしたちが他者とコミュニケーションするにあたって、言語が重要な媒体としてあらわれる以上、「翻訳」を避けて通ることは不可能だ。著者に言わせれば、翻訳とは、言語や文化が接触するところにかならず生じるものであるためだ(それは必ずしも「外国語」や「異文化」に限らない)。翻訳は、言語や文化がはらむ差異の存在をあばきながら、その差異を楽しませてくれる。著者がくりかえし強調する点はここにある。
マンガの翻訳やアニメのファンサブ、特異な「翻訳」として近年注目を集めている「漢文訓読」など、日本の読者にとって親しみやすい例が挙げられているのも本書の魅力。さらに、訳者による、日本の読者むけの読書案内を巻末に付した。

 

www.hakusuisha.co.jp