『読みなおすナボコフ、書きなおすナボコフ』ですが、拙稿は棚に上げるとして、ひとつの読みどころは海外からの寄稿者(ボイド、クチュリエ、デュランタイ、パイファー、ウッド、マリコヴァ)ではないかと。
これだけ世界のナボコフ研究が日本語でまとまった形で紹介されるのはもうあまりないのではないか、とさえ思います。総じてレベルが高い一方で、ナボコフ研究にかなり詳しくないとわかりづらい論本もありますね(マリコヴァの論文はロング・ヴァージョンと言うべきものが以前紹介した『本郷の春』で読めますし、そちらのほうが長い分わかりやすい気もします)。
日本のナボコフ研究の紹介、という面ももちろんあります。ただ、寄稿者が多く、ひとりにわりあてられたページが少ないため、総花的な印象を受けないこともないです。また、多くの論文は紀要などですでに発表済みなので、むしろ元の論文の方が長い分わかりやすい気もしますね。寄稿者のモチベーションもさまざまだったのでしょう。
既読論文以外だと、国際学会での発表者以外の原稿も収録されています。これはエッセイ的なものもあり、(ナボコフ研究は忘れて)軽く読めるでしょう。
……こうしてできあがった本を見ると、(よくも悪くも)ヴァラエティーに富んだ本だなあ、という気がします。