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訳すのは「私」ブログ

書いたもの、訳したもの、いただいたものなど(ときどき記事)

Nabokov@Boston: Hotel The Vendome, June, 1950

以前、ナボコフは基本的にはボストンに住まなかった、ということを書きました。そのわずかな例外がこのホテル・ヴァンドームです。


コーネル大学時代、以前から歯が悪かったナボコフはすすめられて歯を全部抜き、総入れ歯にします。その際かかったのがボストンのDr. Favreという歯医者でした。健康な六本の歯を一度に抜いたというのは尋常じゃない気がしますが、当時は普通だったのでしょうか。。。とにかく結構な大手術だったようです。

At the end of May, on the day after the last exams in his Russian literature courses, Nabokov traveled to Boston to have his last six lower teeth removed. AY 168


その抜歯のため、1950年の5月の終わりにナボコフが宿泊したとされるのが、Hotel The Vendomeです。


6月8日にエドマンド・ウィルソンに出した手紙には、歯を抜いたこと、11日までここに滞在し、12日に一泊だけ戻ってきて、その後13日にはイサカに帰ることが書かれています(手紙には抜いた歯の絵も添えられています)。



ナボコフ=ウィルソン往復書簡集』に収録されているこの手紙の現物はイェール大学のバイネキー図書館にありますが、このヴァンドーム・ホテルの便箋に書かれています。ナボコフはホテルの便箋で手紙を書くのが好きだったようです。

When I was a little child and traveled to various European resorts, I could never resist the temptation to scribble on sheets of hotel paper. Dear Bunny, Dear Volodya, p. 279



この便箋にはホテルの外観がプリントされていました(蝶はナボコフの手による)。



ナボコフ=ウィルソン往復書簡集 1940‐1971

ナボコフ=ウィルソン往復書簡集 1940‐1971



実際のホテルの建物の、現在の外観はこんな感じです。1871年に建てられ、1881年に増築された当時は大ホテルだったいう建物のシルエットを保っていますね。



ホテル・ヴァンドームは現在は営業していません。一階はレストラン、その上はアパートになっているようです。


グリーンラインのCoply駅から徒歩三分ほどのところに位置しています。Commonwealth Avenue とDartmouth Streetとの交わるところ、南西の角に位置しています。歩いてボストンの中心部に向かいやすいですし、川を渡ってケンブリッジにも向かいやすい便利な場所に位置しています。


別の角度から。




ところで、ナボコフとは直接は関係ないですが、このホテルでは1972年6月17日に9人の消防士が亡くなるという大きな火災が起こりました。



現在、亡くなった消防士を記念するモニュメントが設置されています。



英語で、解説を加えながら街めぐりをすることを「ツアー」といいますが(街に限らず、大学や図書館・美術館などなんでもツアーがある)、これでケンブリッジ・ウェルズリー・ボストンときた「ナボコフ・ツアー」はいったん終わりです(あとでindexをアップする予定です)。