山辺弦さんより、ご訳書をご恵投たまわりました。
ギジェルモ・カブレラ・インファンテ『気まぐれニンフ』山辺弦訳、水声社
インファンテの没後に出版された作品とのことです。
《もう40年以上も前のことなのに、いまだに彼女の姿をまさにいま見ているかのように思い出せる。その時以来、わたしはただの一日も彼女を思い出さない日はなかった。》
魅力あふれる16歳の少女エステラとの運命的な出会いから愛の逃避行におよぶ主人公。ハバナの街を巡るひと夏のアヴァンチュールの終着点とは? 永遠なる《ニンフ》との思い出を言葉遊びに溢れた軽妙洒脱な会話で描き出す、言葉の曲芸師カブレラ・インファンテの快作。
インファンテと言えば実験的な作風で知られていますが、翻訳にあたって工夫が凝らされているようです。
今回翻訳にあたってもっても気をつけたのは、言語遊戯と、物語の筋や含意という両輪を、日本語においてもうまく両立させることだった。そのために様々な試みをおこなったのだが、第一に断っておかなくてはならないのは、言語の可能性を探求した原著の精神を写しとるための唯一可能な手段として、しばしば原文の位置から思いきり飛び上がり、まったく独自の言語遊びや表現などを加えたり、時には通常なら誤訳となりかねないニュアンスをも、一番ふさわしい訳と信じて取り入れたりしたことである。
山辺弦「訳者あとがき」
拝読するのが楽しみです。山辺さん、どうもありがとうございました。