『「世界文学」はつくられる――1827-2020』(東京大学出版会)の見本ができてきました。
(一部の方には)大変お待たせしております。
『「世界文学」はつくられる――1827-2020』(東京大学出版会)の刊行日が出ています。多くのオンライン書店では7月10日となっています。
本書は日本・ソ連・アメリカで、いろいろな「世界文学全集」の内容を実際に目次をあげて紹介しながら、どんな作品があらわれて消えていったのか、その理由は、そしてそもそもその背後にあった「世界文学」という概念はなんだったのかといったものを探っていくという内容になっています。
主要目次は次のようになっています。
序 章 「世界文学」とはなにか――ヴェルトリテラトゥーアの野望 1827-2019
第I部 本邦,「世界文学」事始め
第一章 パラダイムを輸入する――モウルトンの「世界文学」論とその影響 1890-1952
第二章 「世界文学全集」の時代――『ハーヴァード・クラシックス』と円本版『世界文学全集』 1909-1932
第三章 「世界文学全集」の光芒――大衆教養主義の興隆と減退 1945-2011
第II部 マルクスの亡霊たち
第一章 革命と世界のカタログ化 1918-1925
第二章 六千万冊の夢――ソヴィエト版「世界文学全集」はいかに鍛えられたか 1967-1977
第三章 「世界文学」に翻弄された男――東洋学者ニコライ・コンラド 1922-1970
第III部 ワールド・リットの普及と変転
第一章 「世界文学」の発明――ウィスコンシン,マディソン 1950
第二章 新しい「世界文学」のヒロイン 1956-2004
第三章 全集から部分集合へ,さらなるエディションへと 2004-2018
結びにかえて 「世界文学」研究――いまからはじまる 2020-
詳細な目次もアップする予定です。
『「世界文学」はつくられる――1827-2020』の正誤表です。
V頁 12 精読と「意気な女」→13 精読と「意気な女」
23頁 注27 張隆溪『アレゴレシス――東洋と西洋の文学理論の翻訳可能性』水声社、二〇一六年。張隆溪『比較から世界文学へ』水声社、二〇一八年。
→張隆溪『アレゴレシス――東洋と西洋の文学理論の翻訳可能性』鈴木章能・鳥飼真人訳、水声社、二〇一六年。張隆溪『比較から世界文学へ』鈴木章能訳、水声社、二〇一八年。
24頁 注37 多国籍→外国籍
29頁 それは一九二一年のワイマールでは → それは一八二一年のワイマールでは
33頁 同じような→同じやうな
殆ど→殆んど
80頁 翻訳文芸→飜訳文学
思はれていた→思はれてゐた
明治の昔のこと→明治の昔の事
洋食も翻訳も→洋食も飜訳も
紅葉露伴を読まない者はあっても→紅葉・露伴を読まない者があっても
ジヤンバルジヤン→ジャンバルジャン
知らない者は、子供→知らない者は子供
ゐないはずだ→ゐない筈だ
85頁 無垢なるいかさま医師→無邪気を装った山師
101頁 矢口信也→矢口進也
104、115頁 芽盾→茅盾
118頁 享楽するもの→享楽する者
世界に於ける→世界に於ける文化的レベルを表示する
120頁 『世界少年少女文学全集』全六十八巻(一九五四―一九五六)→『世界少年少女文学全集』全五十巻(一九五三―一九五六)
『少年少女世界文学全集』全五十巻(一九五九―一九六二)→『少年少女世界文学全集』全五十巻(一九五八―一九六二)
121頁 文学と言へば→文学といへば
堕落を誘うものの→堕落に誘うものゝ
シエクスピア→シエクスピヤ
ぐらゐ一通り読んで心の修養をする→くらゐ一通り読んで、心の修養とする
139頁 注(23)佐々木甚一→佐々木基一
(26)住来社→政界往来社
141頁 注(50)ブルウスト→プルウスト
157頁 ブドブルグ→ブドベルグ
178頁 注18 [ニーナ・ベルベーロワ『鉄の女――サー・ロッカート、ゴーリキイ、H・G・ウェルズの愛人の生涯』工藤精一郎訳、一九八七年、中央公論社、一四九頁。引用部は英訳より作成した。]
216-217頁 索引9頁 ユバン→ユヴァン
227頁 ことにつかいも→ためにつかいも
249、250頁 索引6頁 レフ・エイデン→レフ・エイドリン
257頁 出現したことは。これは中世の多くの→出現したことは、これは中世の多くの
263頁 注41 『世界文学詩史』→『世界文学史』
294頁 一九七九年に刊行された『ノートン版アメリカ文学アンソロジー』では不十分とはいえ大きな改革がなされたにもかかわらず→一九七九年に刊行が開始された『ノートン版アメリカ文学アンソロジー』では八〇年代に大きな改革に着手したにもかかわらず
326頁 モレッティ『世界文学への試論』→モレッティ「世界文学への試論」
索引
14頁 ブドブルグ→ブドベルグ
15頁 芽盾→茅盾
16頁 矢口信也→矢口進也
※随時追加します。
訳者の金子奈美さんからご恵贈いただきました。どうもありがとうございます。
ベルナルド・アチャガ『アコーディオン弾きの息子』金子奈美訳、新潮クレストブックス
バスク語で創作する世界的な作家として著名な、ベルナルド・アチャガの550頁を超す大作です。
アチャガの創作と自己翻訳について、金子さんの『アコーディオン弾きの息子』の「訳者あとがき」から引用します。
『アコーディオン弾きの息子』には、二〇〇三年に出版されたバスク語版Soinujolearen semeaのほかに、その翌年、作者と翻訳家の妻アシュン・ガリカノとの共訳で刊行されたスペイン語版El hijo del acordeonistaが存在する。アチャガは、ごくわずかな例外を除けばこれまで一貫してバスク語で書いてきた作家だが、バスク語のような少数言語で書くことは、支配的な言語との関係の中で、その圧倒的な求心力に抗しながら書くことでもある。『オババコアック』の成功後、アチャガはバスク語で書き続けながらより多くの読者に作品を届けるため、バスク語で刊行した本を(主に妻との共訳で)スペイン語に翻訳するようになった。その結果、彼の多くの作品には、どちらも作者自身による二つの言語のバージョンが存在し、他の言語への翻訳に際してはスペイン語から訳されるのが通例だった。572頁
こういった背景を踏まえて、訳者は「バスク語を底本としたうえで、スペイン語版における変更点のなかでも、作者が作品をよりよいものにするために書き加えたと明らかに判断できるもの……については日本語の訳文に反映させるのが最善の策ではないかという結論にいたり」作者の同意をえたうえで、「折衷訳」という選択をしたようです。
訳者の金子さんは第二回日本翻訳大賞を、バスク語作家のキルメン・ウリベの『ムシェ 小さな英雄の物語』(白水社)で受賞されています。
だいぶ前に試写を拝見した映画の公開が6月20日に決まったようです。
映画「ドヴラートフ レニングラードの作家たち」
監督はアレクセイ・ゲルマン・ジュニア。
主演のミラン・マリッチが「むくつけき」男ドブラートフを見事に演じています。
フルジャノフスキー監督が、ノーベル文学賞受賞詩人ヨシフ・ブロツキーの生涯を描いた「一部屋半、あるいは故郷へのセンチメンタル・ジャーニー」(2008、日本未公開)を思い出すところもあり。
「ドブラートフ」のほうにもブロツキーは出てきますが、
当時のレニングラードの文学シーンの様子が(関係者的には)見どころのひとつでしょう。
成文社(じゃなくてもいいけど)は既刊二冊の邦訳を
再刊してあげてください。