訳すのは「私」ブログ

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翻訳どきの私達伝説

世界文学とは何か?

世界文学とは何か?


ダムロッシュ『世界文学とは何か?』ですが、6人の共訳です。


一口で「共訳」といってもその形態はさまざまあると思うので、なにかの参考のため作業の実態をメモしておきます。


1、まず、章ごとに担当者が下訳を作ってきて、それをメーリング・リストに流し、
その段階で全員がチェックして気になる点など赤を入れる


2、それを元に修正したヴァージョンを担当者が作り、リストに流しておく。


3、約二週間に一回行われる読書会に集まって、全員でその訳文について議論する。
議論の結果を担当者が訳文に反映させて第一稿ができる。


……基本的にはこの繰り返しで作っていました。


「共訳」というと、だれかひとり監訳者がいて、ほかのひとの下訳をかたっぱしから直していく、という場合もあるかと思うのですが、この本の場合、全員が比較的対等な立場でお互いの訳文をかなり読み込んで意見を出す、という方法をとりました(もちろん最終的な統一はとってもらいましたが)。

このやり方は、分野を超えた共同作業を「世界文学」のひとつの手法(というか実践)として提唱しているこの本にあったものではなかったでしょうか。

一方、このやり方の問題点はとにかく時間がかかるというものです。当初、月一の読書会で一章進む予定だったのですが、まったく不可能だとわかり、すぐ隔週になりました。読書会は基本的に本郷の図書館の演習室をかりきって、午前10時から予約がきれる午後2時までぶっつづけでしたが、それでも10頁と進まないことも多かったです。

また、途中何人かのメンバーは海外に派遣されたりもして長期離脱を余儀なくされました。

そんなこんなで作業を始めてから刊行まで2年以上もかかってしまいました。

しかし、最後までお互いの顔を見ながら、ひとつの方法に沿って作業できたという点はよかったのではないでしょうか。たぶん。