ジョージ・スタイナーが「脱領域の知性」としてあげた作家のうち、ボルヘスの自己翻訳についてはいまいちはっきりしたことがつかめず、『訳すのは「私」』では触れませんでした。
ボルヘスのスペイン語→英語の翻訳にかんしては、英訳者ノーマン・トマス・ディ=ジョバンニとの共同作業が知られていて、ジェイムズ・ウッダルの伝記を読んでも大きくとりあげられています。
ディ=ジョバンニは1968年にブエノスアイレスを訪れ、1971年に帰国するまでの間、ボルヘスと共訳作業をしていたようです。
Efrain KristelのInvisible Works: Borges and Translationを読むと自己翻訳についても若干触れられていますが、それによれば、原作にたいしてかなり自由に訳すことを許した&積極的に改作したようです。そのため厳格な研究者から批判されることもあるとか。
ボルヘスはナボコフと違って翻訳について体系的な理論を論じたエッセイを残したわけではないのですが、最近岩波文庫になった『詩という仕事について』では「言葉の調べと翻訳」という詩の翻訳論を読むことができます。
こうしてみると、同じ「脱領域」作家でもナボコフとは対極にくる翻訳観を持っていたようです。まあ、もっとくわしく調べてみないとなんとも言えないですが……(というより、スペイン語が堪能な方に調べてほしいですが……)。
Invisible Work: Borges and Translation
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