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ベルナルド・アチャガ『アコーディオン弾きの息子』金子奈美訳、新潮クレストブックス

訳者の金子奈美さんからご恵贈いただきました。どうもありがとうございます。

 

ベルナルド・アチャガ『アコーディオン弾きの息子』金子奈美訳、新潮クレストブックス

 

バスク語で創作する世界的な作家として著名な、ベルナルド・アチャガの550頁を超す大作です。

 

www.shinchosha.co.jp

アチャガの創作と自己翻訳について、金子さんの『アコーディオン弾きの息子』の「訳者あとがき」から引用します。

 

アコーディオン弾きの息子』には、二〇〇三年に出版されたバスク語版Soinujolearen semeaのほかに、その翌年、作者と翻訳家の妻アシュン・ガリカノとの共訳で刊行されたスペイン語版El hijo del acordeonistaが存在する。アチャガは、ごくわずかな例外を除けばこれまで一貫してバスク語で書いてきた作家だが、バスク語のような少数言語で書くことは、支配的な言語との関係の中で、その圧倒的な求心力に抗しながら書くことでもある。『オババコアック』の成功後、アチャガはバスク語で書き続けながらより多くの読者に作品を届けるため、バスク語で刊行した本を(主に妻との共訳で)スペイン語に翻訳するようになった。その結果、彼の多くの作品には、どちらも作者自身による二つの言語のバージョンが存在し、他の言語への翻訳に際してはスペイン語から訳されるのが通例だった。572頁

 

こういった背景を踏まえて、訳者は「バスク語を底本としたうえで、スペイン語版における変更点のなかでも、作者が作品をよりよいものにするために書き加えたと明らかに判断できるもの……については日本語の訳文に反映させるのが最善の策ではないかという結論にいたり」作者の同意をえたうえで、「折衷訳」という選択をしたようです。

 

 

 

訳者の金子さんは第二回日本翻訳大賞を、バスク語作家のキルメン・ウリベの『ムシェ 小さな英雄の物語』(白水社)で受賞されています。