今井亮一さんから訳書をご恵投いただきました。
『スヌーピーのひみつ A to Z』――書名どおり、スヌーピーにまつわるすべてを
AからZまで項目別に編集したものになっています。
漫画だけでなく、写真・図版多数の楽しい本です。
今井さん、どうもありがとうございました。
ありがたいことに、モレッティ『遠読』の書評をいくつかいただいております。
ほかにも発見次第、このエントリに随時追加していきます。
モレッティは本書を、文学の変化とは隣の地域へと新たな形式が広がっていく「進化的」な過程であるとする論文ではじめる。九〇年代から二〇一〇年 代に発表した論文計十編が収録されており、統計的な処理を通して文学を考えるという一つのジャンルの立ち上げを見ることができる。[中略〕科学の言葉であらゆることを押しきるのは横暴だが、便利な道具の利用を禁じるのは馬鹿げたことだ。
本書を深く理解し読者に伝えながら、同時に鋭い批判も放っている訳注やあとがきも示唆に富む。翻訳はつねに批評だと思い知る。
http://mainichi.jp/articles/20160717/ddm/015/070/004000c
(なぜか埋め込みできず)
8月6日 武田将明先生書評(『新潮』2016年9月号、260―261頁)
モレッティほどの研究者が、あえてこのような研究に挑戦していることの意義を過小評価してはならない。デジタル時代に批評を志す者ならば、一度は手に取らないといけない書物である。
8月7日 牧原出先生書評(『読売新聞』)
著者の意図はこうだ。ごく少数の「名作」にのみ焦点を当てた「精読」による解釈には偏向が紛れているのではないか。読まれざる作品が仮に凡作だとしても、それを含めて世界文学の「一般的」な構造とは何か、それはどう進化して現在に至ったのか明らかにすべきではないか。
たとえば、本の題名の長さとその中身はどう関係しているのか? 登場人物のネットワーク分析をすると何が見えてくるのか?などなど。そして、多少こじつけめいた部分もあるけれど、以外におもしろい結果が出てくる部分もある。
方向性はおもしろい。あまりに細部にこだわったり、ウェットな情感に耽溺したりしない、ドライな「読み」の可能性が出ている。
12月 戸塚学先生評
「世界文学」という問いの発見――F・モレッティ著『遠読 <世界文学>システムへの挑戦』(『世界文学』124号、112-114頁。)
「近代ヨーロッパ文学--その地理的素描」は、「遠読」概念着想の契機となった論文である。[中略]モレッティはヨーロッパ文学を複数的・流動的な「分裂したヨーロッパ文学」と捉え、その分裂の過程を文学が成長する生態系として捉えるのである。[中略]一見大胆に見える断言や解釈の背後に分析の蓄積が垣間見えるこの論考が個人的には面白かった。
モレッティはしばしば文学作品と社会事象との間の関係性をアナロジーで読み解くが[中略]、こうしたアナロジーは実はアウエルバッハやシュッピツァーらの文体論や構造主義批評の形式分析の延長線上にあり、必ずしも新たな方法の提示にはなっていないように思われる。
2017年4月『れにくさ』142―146頁 片山耕二郎さん評
ただそうした未来への時計[=遠読]をみずから一分進めるより、今までどおり好きな本を精読することを大抵の人間は選ぶと思うのである。とりわけ文学研究を志すほどの読書好きならば。この点でモレッティは小説の登場人物のように勇敢で、見方によってはヒーローでもあり、しかし悪役でもある。このように『遠読』という本は、そうした主人公の挑戦と成長が描かれたノンフィクションとして読んだとき、もっとも価値があるように思われる。
その意味で、このエッセイ[「小説――理論と歴史」]は大変魅力的な失敗作である。それは魅力的な成功作よりもときに価値がある――なぜなら、成功作は発表されるが、失敗作はしばしば、どれだけ興味深い内容を含んでいてもタンスの奥にしまわれてしまうからである。自覚と誇りを持って失敗に跳び込む彼の作法こそが斬新であり、このエッセイを魅力的にしている。
『比較文学』60巻、2017年、156-160頁 ソーントン不破直子先生評
四人の共訳とはいえ、大きな仕事である。訳文の正確さとともに、モレッティの文体の歯切れよさをよく伝えている。また多くの訳注をつけ、邦訳書がある場合はそれを示しているのも親切だ。
比較して読んでみるのも一興かと思います。
編訳した『ナボコフの塊――エッセイ集1921―1975』が本日刊行になりました。
よろしくお願いいたします。
<本商品の特徴>
・日本語完全オリジナル編集
・ロシア語・英語・フランス語のエッセイをすべて原語より翻訳
・全39編(ロシア語19編、英語19編、仏語1編)、448頁のうち、一編をのぞきすべて本邦初訳、初紹介
・「定番」だけでなく、21世紀になってアーカイヴから発見されたものまで、ナボコフの知られざる面を紹介
・ロシア語版『ロリータ』のあとがき、翻訳論、創作論、文学講義補講、言語学習のコツ、蝶の採集記、書評、追悼文、ボクシングのレポート、朗読会メモ、没原稿、レシピまで、多岐にわたる内容を収録
・1921年から1975年まで、半世紀以上にわたる作家人生のすべての時期の散文を採録。ナボコフのもうひとつの「自伝」として
・充実した注・解題・訳者あとがき・索引・蝶蛾リスト(!)をふくむ
・折りこみの「ナボコフの招待」は、荒木崇先生の「パグからブルーへ――鱗翅類学者としてのナボコフ」
凡例
Ⅰ 錫でできた星――ロシアへの郷愁
・「ロシアの川」・「ケンブリッジ」
・「笑いと夢」
Ⅱ 森羅万象は戯れている――遊ぶナボコフ
・「塗られた木」・「ブライテンシュトレーターVSパオリーノ」
・「E・A・ズノスコ=ブロフスキー『カパブランカとアリョーヒン』、パリ」
・「オペラについて」
Ⅲ 流謫の奇跡と帰還の奇跡を信じて――亡命ロシア文壇の寵児、V・シーリン
・「一般化について」・「ソヴィエト作家たちの貧困について少々、およびその原因を特定する試み」
・「美徳の栄え」
・「万人が知るべきものとは」
Ⅳ ロシア文学のヨーロッパ時代の終わり――亡命文学の送り人
・「Ju・I・アイヘンヴァリドを追悼して」・「A・O・フォンダミンスキー夫人を追悼して」
・「ホダセーヴィチについて」
・「定義」
・「I・V・ゲッセンを追悼して」
・「『向こう岸』へのまえがき」
Ⅴ 英語の母音はレモン、ロシア語の母音はオレンジ――駆け出し教師時代
・「ロシア語学習について」・「ロシア学のカリキュラムにおける位置」
Ⅵ 張りつめているように見えて、だるだるに弛みきっている――口うるさい書評家
・「イヴァン・ブーニン『選詩集』現代雑記社、パリ」・「『現代雑記』三七号、一九二九年」
・「ディアギレフと弟子」
・「サルトルの初挑戦」
Ⅶ 文学講義補講 第一部 ロシア文学編
・「プーシキン、あるいは真実と真実らしいもの」・「決闘の技法」
・「レールモントフ『現代の英雄』訳者まえがき」
Ⅷ 文学講義補講 第二部 劇作・創作講座編
・「劇作」・「悲劇の悲劇」
・「霊感」
Ⅸ 家族の休暇をふいにして――蝶を追う人【バタフライハンター】
・「ピレネー東部とアリエージュ県の鱗翅目についての覚え書き」・「Lycaeides Sublivens Nab. のメス」
Ⅹ 私のもっともすぐれた英語の本――『ロリータ』騒動
・「ロシア語版『ロリータ』へのあとがき」・「『ロリータ』とジロディアス氏」
Ⅺ 摩天楼のように伸びた脚注を――翻訳という闘い
・「翻訳の問題――『オネーギン』を英語に」・「奴隷の道」
・「翻案について」
Ⅻ 私が芸術に完全降伏の念を覚えたのは――ナボコフとの夕べ
・「一九四九年五月七日「著者による『詩と解説』の夕べ」のための覚え書き」・「ナボコフ氏受賞スピーチ」
おまけ
・「ナボコフ風たまご料理」
解題
編訳者あとがき
人名・作品名索引
「塊」カテゴリーも用意しました。過去記事が見れますので、ご利用ください。