訳すのは「私」ブログ

書いたもの、訳したもの、いただいたものなど(ときどき記事)

チャールズ・M・シュルツ、谷川俊太郎、今井亮一、井出幸亮『スヌーピーのひみつ A to Z』新潮社

今井亮一さんから訳書をご恵投いただきました。

 

スヌーピーのひみつ A to Z』――書名どおり、スヌーピーにまつわるすべてを

AからZまで項目別に編集したものになっています。

 

 

漫画だけでなく、写真・図版多数の楽しい本です。

 

今井さん、どうもありがとうございました。

沼野充義編、高橋知之編集協力『ドストエフスキー ポケットマスターピース10』集英社文庫ヘリテージシリーズ

高橋知之さんから共訳書をいただきました。

 

沼野充義編、高橋知之編集協力『ドストエフスキー ポケットマスターピース10』集英社文庫ヘリテージシリーズ

 

 

「四大長編の読みどころ」から、詳細な解題や文献一覧、年譜までついていますので、

 初心者から専門家までじっくり楽しめる内容だと思います。

 

高橋さん、どうもありがとうございました。

フランコ・モレッティ『遠読――<世界文学システム>への挑戦』みすず書房⑧:書評まとめ

ありがたいことに、モレッティ『遠読』の書評をいくつかいただいております。

 

ほかにも発見次第、このエントリに随時追加していきます。

 

 

7月10日 円城塔さん書評(『朝日新聞』)

 モレッティは本書を、文学の変化とは隣の地域へと新たな形式が広がっていく「進化的」な過程であるとする論文ではじめる。九〇年代から二〇一〇年 代に発表した論文計十編が収録されており、統計的な処理を通して文学を考えるという一つのジャンルの立ち上げを見ることができる。[中略〕科学の言葉であらゆることを押しきるのは横暴だが、便利な道具の利用を禁じるのは馬鹿げたことだ。

 

www.asahi.com

7月17日 鴻巣友季子さん書評(『毎日新聞』)

 

本書を深く理解し読者に伝えながら、同時に鋭い批判も放っている訳注やあとがきも示唆に富む。翻訳はつねに批評だと思い知る。

 

http://mainichi.jp/articles/20160717/ddm/015/070/004000c

 

(なぜか埋め込みできず)

 

 

8月6日 武田将明先生書評(『新潮』2016年9月号、260―261頁)

 

モレッティほどの研究者が、あえてこのような研究に挑戦していることの意義を過小評価してはならない。デジタル時代に批評を志す者ならば、一度は手に取らないといけない書物である。

 

www.shinchosha.co.jp

 

8月7日 牧原出先生書評(『読売新聞』)

 

著者の意図はこうだ。ごく少数の「名作」にのみ焦点を当てた「精読」による解釈には偏向が紛れているのではないか。読まれざる作品が仮に凡作だとしても、それを含めて世界文学の「一般的」な構造とは何か、それはどう進化して現在に至ったのか明らかにすべきではないか。

www.yomiuri.co.jp

 

9月20日 山形浩生さん書評

たとえば、本の題名の長さとその中身はどう関係しているのか? 登場人物のネットワーク分析をすると何が見えてくるのか?などなど。そして、多少こじつけめいた部分もあるけれど、以外におもしろい結果が出てくる部分もある。

方向性はおもしろい。あまりに細部にこだわったり、ウェットな情感に耽溺したりしない、ドライな「読み」の可能性が出ている。

 

cakes.mu

 

12月 戸塚学先生評

 

「世界文学」という問いの発見――F・モレッティ著『遠読 <世界文学>システムへの挑戦』(『世界文学』124号、112-114頁。)

 

「近代ヨーロッパ文学--その地理的素描」は、「遠読」概念着想の契機となった論文である。[中略]モレッティはヨーロッパ文学を複数的・流動的な「分裂したヨーロッパ文学」と捉え、その分裂の過程を文学が成長する生態系として捉えるのである。[中略]一見大胆に見える断言や解釈の背後に分析の蓄積が垣間見えるこの論考が個人的には面白かった。

 

モレッティはしばしば文学作品と社会事象との間の関係性をアナロジーで読み解くが[中略]、こうしたアナロジーは実はアウエルバッハやシュッピツァーらの文体論や構造主義批評の形式分析の延長線上にあり、必ずしも新たな方法の提示にはなっていないように思われる。

 

2017年4月『れにくさ』142―146頁 片山耕二郎さん評

 

ただそうした未来への時計[=遠読]をみずから一分進めるより、今までどおり好きな本を精読することを大抵の人間は選ぶと思うのである。とりわけ文学研究を志すほどの読書好きならば。この点でモレッティは小説の登場人物のように勇敢で、見方によってはヒーローでもあり、しかし悪役でもある。このように『遠読』という本は、そうした主人公の挑戦と成長が描かれたノンフィクションとして読んだとき、もっとも価値があるように思われる。

 

その意味で、このエッセイ[「小説――理論と歴史」]は大変魅力的な失敗作である。それは魅力的な成功作よりもときに価値がある――なぜなら、成功作は発表されるが、失敗作はしばしば、どれだけ興味深い内容を含んでいてもタンスの奥にしまわれてしまうからである。自覚と誇りを持って失敗に跳び込む彼の作法こそが斬新であり、このエッセイを魅力的にしている。

 

比較文学』60巻、2017年、156-160頁 ソーントン不破直子先生評

 

四人の共訳とはいえ、大きな仕事である。訳文の正確さとともに、モレッティの文体の歯切れよさをよく伝えている。また多くの訳注をつけ、邦訳書がある場合はそれを示しているのも親切だ。

 

比較して読んでみるのも一興かと思います。

 

 

 

 

『ナボコフの塊ーーエッセイ集1921-1975』作品社⑧:正誤表

ナボコフの塊――エッセイ集1921―1975』のほうも、正誤表をあげておきます。
 
(まちがいが見つかり次第、順次更新します。)
 
98頁 「彼についての最後の記憶」→「ロシア詩についての最後の記憶」
  
目次、250頁、401頁 「ピレネー東部とアリエージュ県の鱗翅目についての覚え書き」→「東ピレネー県とアリエージュ県の鱗翅目についての覚え書き」
 
401頁 誤「自らが新種を認定した蝶」→正「自らが新亜種として認定した蝶」
 
401頁 誤「なお、この蝶は、現在はNab(ナボコフ)ではなく、〔中略〕と呼ばれている。」→正「現在は、ナボコフがはじめ命名した Lycaeides argyrognomon sublivens ではなく、〔中略〕と呼ばれている。独立種として、Plebejus (Lycaeides) sublivens とされることもある。」
 
402頁 誤 "The Female of Lycaeides Argyrognomon Sublivens"→正 "The Female of Lycaeides argyrognomon sublivens"
 
416頁 誤 『ヴェラとの書簡集』(妻との往復書簡集)→正『ヴェラへの手紙』(妻あての書簡集)
 

 

 

野中進・籾内裕子・沼野恭子編『世界のなかの日本文学―ー旧ソ連諸国の文学教育から』

野中進先生より、編著をご恵贈いただきました。どうもありがとうございました。

 

野中進・籾内裕子・沼野恭子編『世界のなかの日本文学――旧ソ連諸国の文学教育から』(埼玉大学教養学部 リベラルアーツ叢書8)埼玉大学教養学部・人文社会科学研究科、2016年

 

旧ソ連の諸国出身の研究者と日本人研究の共同研究で、非常に貴重な資料ですね。少なくとも日本語でまとまったものはでていないので、今後、同テーマについては、この本から研究をはじめることになるのではないかと思います。

 

(エッセイ)「どっちが勝つ?」

エッセイを寄稿しました。

 

「どっちが勝つ?」『文學界』2016年8月号、268-269頁。

 

 

とくにナボコフも世界文学も関係ない、普通のエッセイです。

「エセー(随想録)」のコーナーですが、とくに高尚な思想はなく、字義通りのエッセイですね……。

 

訳書二冊刊行のあいだにいただいた依頼ですが、逆に気分転換になり、かえってよかったかと思います。最近は文芸誌にお呼びがかかることもめったになかったので、うれしかったですね。

 

www.bunshun.co.jp

文學界』2016年8月号は本日(7月7日)発売です。特集は夏らしく異色短篇特集「怪」になっております。関心のある方はお手にとってお読みください。

 

 

『ナボコフの塊ーーエッセイ集1921-1975』作品社⑦:刊行になりました。

編訳した『ナボコフの塊――エッセイ集1921―1975』が本日刊行になりました。

よろしくお願いいたします。

 

 

<本商品の特徴>

・日本語完全オリジナル編集

・ロシア語・英語・フランス語のエッセイをすべて原語より翻訳

・全39編(ロシア語19編、英語19編、仏語1編)、448頁のうち、一編をのぞきすべて本邦初訳、初紹介

・「定番」だけでなく、21世紀になってアーカイヴから発見されたものまで、ナボコフの知られざる面を紹介

・ロシア語版『ロリータ』のあとがき、翻訳論、創作論、文学講義補講、言語学習のコツ、蝶の採集記、書評、追悼文、ボクシングのレポート、朗読会メモ、没原稿、レシピまで、多岐にわたる内容を収録

・1921年から1975年まで、半世紀以上にわたる作家人生のすべての時期の散文を採録ナボコフのもうひとつの「自伝」として

・充実した注・解題・訳者あとがき・索引・蝶蛾リスト(!)をふくむ

・折りこみの「ナボコフの招待」は、荒木崇先生の「パグからブルーへ――鱗翅類学者としてのナボコフ

 

 

凡例

 

Ⅰ 錫でできた星――ロシアへの郷愁
・「ロシアの川」

・「ケンブリッジ

・「笑いと夢」

 

Ⅱ 森羅万象は戯れている――遊ぶナボコフ
・「塗られた木」

・「ブライテンシュトレーターVSパオリーノ」

・「E・A・ズノスコ=ブロフスキー『カパブランカとアリョーヒン』、パリ」
・「オペラについて」

 

Ⅲ 流謫の奇跡と帰還の奇跡を信じて――亡命ロシア文壇の寵児、V・シーリン
・「一般化について」

・「ソヴィエト作家たちの貧困について少々、およびその原因を特定する試み」

・「美徳の栄え」

・「万人が知るべきものとは」

 

 ロシア文学のヨーロッパ時代の終わり――亡命文学の送り人
・「Ju・I・アイヘンヴァリドを追悼して」

・「A・O・フォンダミンスキー夫人を追悼して」

・「ホダセーヴィチについて」

・「定義」

・「I・V・ゲッセンを追悼して」

・「『向こう岸』へのまえがき」

 

Ⅴ 英語の母音はレモン、ロシア語の母音はオレンジ――駆け出し教師時代
・「ロシア語学習について」

・「ロシア学のカリキュラムにおける位置」

 

Ⅵ 張りつめているように見えて、だるだるに弛みきっている――口うるさい書評家
・「イヴァン・ブーニン『選詩集』現代雑記社、パリ」

・「『現代雑記』三七号、一九二九年」

・「ディアギレフと弟子」

・「サルトルの初挑戦」

 

Ⅶ 文学講義補講 第一部 ロシア文学
・「プーシキン、あるいは真実と真実らしいもの」

・「決闘の技法」

・「レールモントフ『現代の英雄』訳者まえがき」

 

Ⅷ 文学講義補講 第二部 劇作・創作講座編
・「劇作」

・「悲劇の悲劇」

・「霊感」

 

Ⅸ 家族の休暇をふいにして――蝶を追う人【バタフライハンター】
・「ピレネー東部とアリエージュ県の鱗翅目についての覚え書き」

・「Lycaeides Sublivens Nab. のメス」

 

Ⅹ 私のもっともすぐれた英語の本――『ロリータ』騒動
・「ロシア語版『ロリータ』へのあとがき」

・「『ロリータ』とジロディアス氏」

 

Ⅺ 摩天楼のように伸びた脚注を――翻訳という闘い
・「翻訳の問題――『オネーギン』を英語に」

・「奴隷の道」

・「翻案について」

 

Ⅻ 私が芸術に完全降伏の念を覚えたのは――ナボコフとの夕べ
・「一九四九年五月七日「著者による『詩と解説』の夕べ」のための覚え書き」

・「ナボコフ氏受賞スピーチ」

 

おまけ
・「ナボコフ風たまご料理」

 

解題

 

編訳者あとがき

 

人名・作品名索引

 

 

「塊」カテゴリーも用意しました。過去記事が見れますので、ご利用ください。

 

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