訳すのは「私」ブログ

書いたもの、訳したもの、いただいたものなど(ときどき記事)

2017-01-01から1年間の記事一覧

2017年回顧

2017年は力を溜める一年でした。 自分の仕事で印象深かったものを三つ、あげておきます。 1 "Nabokov and Hearn: Where the Transatlantic Imagination Meets the Transpacific Imagination" yakusunohawatashi.hatenablog.com 五年越しの論文がようやく刊…

小川公代、村田真一、吉村和明編『文学とアダプテーション――ヨーロッパの文化的変容』春風社

奥彩子先生からご共著書のご恵投いただきました。 小川公代、村田真一、吉村和明編『文学とアダプテーション――ヨーロッパの文化的変容』春風社 最近、「アダプテーション」が流行なのでしょうか。 先日は波戸岡先生の『映画原作派のためのアダプテーション入…

日本ナボコフ協会学会誌『KRUG』10

中田先生と編集を担当した日本ナボコフ協会の学会誌『KRUG』の10号が刊行されています。 特別講演(Special Lecture) 富士川義之「ナボコフと英国の伝記文学」 1 書評(Book Review) 深澤明利 ウラジーミル・ナボコフ『見てごらん道化師(ハーレクイン)を!』…

ナボコフのアーカイヴを訪ねて⑩ プリンストン大学ファイアストーン図書館

アーカイヴ紀行の10回目です。 今回紹介するのは、南部より一転、プリンストン大学です。 ニューヨークから電車で南にいったプリンストンに位置する大学です。 メトロポリスの喧騒を離れ、町は静かで、キャンパスはすばらしく英国風です。 こんなところで勉…

書評「ナボコフ・コレクション」全五巻、新潮社(『週刊読書人』2017年12月9日号)

『週刊読書人』2017年12月9日号に、 新潮社「ナボコフ・コレクション」について書きました。 下記のリンクから全文を読むことができますので、ぜひお読みください。 dokushojin.com

ウラジーミル・ナボコフ「密偵」(冒頭部)『新潮』2018年1月号、188-191頁。

発売中の『新潮』2018年1月号に ナボコフの「密偵」の冒頭部を訳しました。 「密偵」は以前は『目』として白水社から小笠原豊樹訳で刊行されていた作品です。 今回、『新潮』では特集を組んでいますが、 先月の『すばる』の「ヴェラの手紙」とは違って、 す…

文学とコンピュータが出会うとき――遠読、量的分析、デジタルヒューマニティーズ

1月13日に「文学とコンピュータが出会うとき――遠読、量的分析、デジタルヒューマニティーズ」という題の講演がおこなわれます(詳細ポスター)。ふるってご参加ください。 コンピュータによる創作が注目される昨今ですが、小説を読む道具としてもコンピュー…

ナボコフのアーカイヴを訪ねて⑨ テキサス大学オースティン校ハリーランサムセンター

アーカイヴ紀行の9回目です。 今回は東海岸から大きく飛びまして、テキサス大学オースティンのハリーランサムセンターをご紹介します。 オースティンはテキサスの州都、テキサス大学オースティン校は名門として知られます。 おなじみの州議事堂。 広いキャン…

ナボコフのアーカイヴを訪ねて⑧ アメリカ自然史博物館

ナボコフ関連の資料が所蔵されているのは、図書館ばかりとは限りません。 ひとつが、博物館です。 ニューヨークのアメリカ自然史博物館は、ナボコフが調査研究をおこなっていたこともあり、研究員とナボコフとの書簡がのこされています。 yakusunohawatashi.…

ナボコフのアーカイヴを訪ねて⑦ アマースト大学アマースト・ロシア文化センター

アーカイヴ紀行の七回目はアマースト大学のロシア文化センターです。 新島襄も留学したアマースト大学(アーマストとかいろいろ表記ありますが、どうでもいい…)は、ボストンと同じマサチューセッツ州にあります。ボストンから西に100キロほど内陸にいった場…

ウラジーミル・ナボコフ「ヴェラへの手紙」『すばる』2017年12月号

本日発売の『すばる』12月号に、ナボコフ「ヴェラへの手紙」を訳出しております。 ウラジーミル・ナボコフ「ヴェラへの手紙」『すばる』2017年12月号、224―244頁。 『ヴェラへの手紙』は2014年に刊行されたナボコフが妻ヴェラにあてた書簡集です。 原書は800…

ノーベル文学賞「候補」の実情

11月4日の『読売新聞』夕刊9面に、「ノーベル文学賞「候補」の実情」という記事を寄稿しました。 10月1日の講演をもとに、日本人最多8度(2017年現在判明しているかぎり)候補になった西脇順三郎について書いたものになっています。 yakusunohawatashi.haten…

2017年度 ナボコフ協会秋の研究会

2017年度 ナボコフ協会秋の研究会が、以下の通り京都大学でおこなわれます。 The Nabokov Society of Japan 今年は外部から講師をお招きしてシンポジウム一件です。 「ナボコフと科学」は、かつてはディーター・ツィンマー、カート・ジョンソン、最近では海…

ロベルト・ボラーニョ『チリ夜想曲』野谷文昭訳、白水社

訳者の野谷文昭先生より、ご恵投賜りました。恐縮しております。 「ボラーニョ・コレクション」の最終巻ということで、完結もおめでとうございます。 いまどき外国文学で「コレクション」が出せるのはすごいですね。それだけ日本でもファンがいるということ…

ナボコフのアーカイヴを訪ねて⑥ コーネル大学カール・A・クロック図書館

アーカイヴ紀行の6回目です。今回はコーネル大学です。 コーネル大学の所在地であるニューヨーク州イサカについては前にナボコフの旧居ツアーをしました。 yakusunohawatashi.hatenablog.com イサカの丘の上にあるコーネル大学、そのメインライブラリーのオ…

越境作家の外国語執筆とアイデンティティ@日本仏文学会秋季大会ワークショップ

10月29日、名古屋大学で行われる日本仏文学会秋季大会のワークショップ「越境作家の外国語執筆とアイデンティティ」で、お話させていただくことになりました。 コーディネーター、田中柊子先生、ほかのパネリストは塩谷祐人先生、鈴木哲平先生になります。 …

ナボコフのアーカイヴを訪ねて⑤ コロンビア大学バフメチェフ・アーカイヴ

アーカイヴ紀行の5回目はコロンビア大学バフメチェフ・アーカイヴです。 コロンビア大学はニューヨーク、マンハッタンのアッパーウェストサイドにあります。このあたりは昔は治安が悪かったそうですが、いまはそうでもない感じです。 印象的なドームのロウ記…

ナボコフのアーカイヴを訪ねて④ イェール大学バイネキー稀覯本・草稿図書館

アーカイヴ紀行の四回目はイェール大学バイネキー稀覯本・草稿図書館です。 イェール大学はコネチカット州ニューヘイヴンに所在する私立大学です。 バイネキー稀覯本・草稿図書館はその荘厳な、英国風キャンパスのはずれにあります。 現代的な、かっこいい外…

「ナボコフは世界文学か? 亡命・二言語使用・翻訳」inシンポジウム「複数の言語、複数の文学──やわらかく拡がる創作と批評」

今年の3月12日に駒場でおこなったシンポジウムの書きおこしが『すばる』に掲載されました。 「複数の言語、複数の文学──やわらかく拡がる創作と批評」『すばる』11月号、270-287頁。 (私はSession 2「ナボコフは世界文学か? 亡命・二言語使用・翻訳」275-2…

ナボコフのアーカイヴを訪ねて③ 議会図書館音楽部門

前回紹介した議会図書館には、Nabokov papers以外にもナボコフ関連の貴重な資料は数多く保管されています。その多くは書簡類で、別々の人間がそれぞれ寄付してしまうと、それぞれの文書・コレクションに分散してしますことになります。 すべてをあげるのは不…

ナボコフのアーカイヴを訪ねて② 議会図書館草稿部門

「ナボコフのアーカイヴを訪ねて」二回目は議会図書館です。 1959年に『ロリータ』のヒットによってふりかかった莫大な税金を減免するために、ナボコフは手元にあった原稿や書簡の一部を議会図書館に寄贈することにしました。完璧主義者の作家は、寄贈後50年…

ナボコフのアーカイヴを訪ねて① ニューヨーク公共図書館バーグコレクション

アーカイヴ探訪の一回目はニューヨーク公共図書館のバーグコレクションです。 マンハッタンのフィフス・アヴェニューの42番街にあって、ブライアント・パークに隣接した二頭のライオンでおなじみの公共図書館です(「公立」図書館ではない)。 『ゴーストバ…

ナボコフのアーカイヴを訪ねて⓪

唐突ですが、今度からナボコフのアーカイヴについての情報を不定期で何回かアップしていきたいと思います。 ナボコフの資料を収蔵している図書館・文書館はいくつかありますが、全米に散らばっているというのが実情です。 もちろんメジャーなところは数カ所…

ペストの記憶

訳者の武田先生にご恵投いただきました。ありがとうございます。 中公文庫版で読みましたが、めっぽう面白かった記憶があります。 以前、ある先生が「カミュの『ペスト』よりおもしろい」と言っていましたが、 それも納得です。 解説も充実しているようで、…

ノーベル文学賞のしくみ――その歴史・権威・審査について

10月1日に勤務先で特別講演の第二回目を開催することになりました(詳細ポスター)。 予約不要・無料ですので、関心のある方はおさそいあわせのうえおいでください。 講演内容 今年の発表も10月中旬にひかえたノーベル文学賞は、言うまでもなく世界でもっと…

「科学の興奮と詩の精密さ――ウラジーミル・ナボコフの文学」『知のフィールドガイド 分断された時代を生きる』白水社

「科学の興奮と詩の精密さ――ウラジーミル・ナボコフの文学」という文章を、東京大学教養学部編『知のフィールドガイド 分断された時代を生きる』(白水社)に寄稿させていただきました。 目次はこちら。 知のフィールドガイド 分断された時代を生きる - 白水…

文学の値打ち――古書店のカタログ、オークション、死後出版――ナボコフの場合

8月4日に勤務先で特別講演を開催することになりました(詳細ポスター)。 予約不要・無料ですので、関心のある方はおさそいあわせのうえおいでください。 講演内容「文学の価値」とはなにによって決まるのでしょうか?――今回は作家ウラジーミル・ナボコフを…

『読者ネットワークの拡大と文学環境の変化 ─19世紀以降にみる英米出版事情』音羽書房鶴見書店

後藤篤さんから共著書『読者ネットワークの拡大と文学環境の変化 ─19世紀以降にみる英米出版事情』(音羽書房鶴見書店)をいただきました。 後藤さんは「書物の流離譚――『ロリータ』の大西洋横断的ネットワーク」という章をお書きになっています。 全11章+…

ナボコフ没後40周年特別企画アンケート

7月2日はナボコフの命日です。1977年7月2日にナボコフは亡くなりました。 マキシム・シュライヤー先生から依頼をいただき、 ナボコフ没後40周年特別企画アンケートに回答しました。 www.colta.ru ロシア語ですが。 回答者は ユーリイ・レヴィング、アンドレ…

スイス文学会編『スイス文学・芸術論集―-小さな国の多様な世界』鳥影社

川島隆さんからまたまたご共著をいただいてしまいました。 どうもありがとうございます。 出版元のサイト https://www.choeisha.com/pub/books/56124.html スイスをスイスたらしめているものは何なのか。文学、芸術、言語、歴史などの総合的な視座から、小さ…