訳すのは「私」ブログ

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ナボコフのアーカイヴを訪ねて③ 議会図書館音楽部門

前回紹介した議会図書館には、Nabokov papers以外にもナボコフ関連の貴重な資料は数多く保管されています。その多くは書簡類で、別々の人間がそれぞれ寄付してしまうと、それぞれの文書・コレクションに分散してしますことになります。

 

すべてをあげるのは不可能ですが、ここではひとつだけ紹介しておきます。

 

草稿部門がある同じ建物James Madison Memorial Bldgに、音楽部門もあります。

そこに、Sergei Rachmaninoff archive, 1872-1992も保管されています。

 

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著名な作曲家であるラフマニノフもまた亡命し、40年代にはアメリカに住んでいました。ナボコフが渡米直後にまっさきに会いにいったのがこのラフマニノフで、さまざなまかたちでナボコフの渡米後の生活をサポートしてくれようとした人物です。

 

ナボコフラフマニノフをめぐる書簡や資料が数通、このアーカイヴに保管されています。たとえばfinding aidを参照すると、BOX-FOLDER 46/30に、

 Nabokov, Vladimir, 1940-1943 and undated

Includes copy of Nabokov's letter to SR of 23 May 1941; Nabokov's English translation of Aleksandr Pushkin's Skupoĭrytsar' (=The Miserly Knight); Nabokov's curriculum vitae; and an undated note about this material in the hand of former Library of Congress staff member Wayne Shirley.

 という資料があることがわかります。つまり、ラフマニノフは自作のオペラのために、プーシキン『吝嗇の騎士』の英訳をナボコフに依頼していたことがわかります。

 

(草稿部門でもそうですが)閲覧時には、この Box folderの番号を請求書に書いてだすことで、資料を出してもらえます。なお、ラフマニノフ・アーカイヴは、現物を見ることもでき、写真も撮ることができますので、解像度からくるストレスがありません。

 

なお、ナボコフラフマニノフについては、この議会図書館の資料を調べて、ユーリイ・レヴィングがすでに"Singing The Bells and The Covetous Knight: Nabokov and Rachmaninoff’s Operatic Translations of Poe and Pushkin"という論文を書いています。