訳すのは「私」ブログ

書いたもの、訳したもの、いただいたものなど(ときどき記事)

ナボコフのアーカイヴを訪ねて⑧ アメリカ自然史博物館

ナボコフ関連の資料が所蔵されているのは、図書館ばかりとは限りません。

ひとつが、博物館です。

ニューヨークのアメリカ自然史博物館は、ナボコフが調査研究をおこなっていたこともあり、研究員とナボコフとの書簡がのこされています。

 

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事前にアポイントを取ったうえで、この77番街側の関係者入口から入ります。

そのうえで、エレベータで四階の資料室に進みます。

(ちなみに、館内の展示も途中で無料で見れちゃうことになります。少し得した気分)

 

 

Cyril F. dos Passos papers, 1932-1978

 

ここのカタログはきわめて使いづらいので、なにがあるのか聞いてみた方がいいです。

このほかにNabokov correspondence folderが保管されており、数名の鱗翅学者とのやりとりを閲覧できます。

ここも撮影可能ですので、カメラ必携です。

 

 

ナボコフのアーカイヴを訪ねて⑦ アマースト大学アマースト・ロシア文化センター

アーカイヴ紀行の七回目はアマースト大学のロシア文化センターです。

 

新島襄も留学したアマースト大学(アーマストとかいろいろ表記ありますが、どうでもいい…)は、ボストンと同じマサチューセッツ州にあります。ボストンから西に100キロほど内陸にいった場所ですね。

バスや車で向かいましょう。

 

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内陸なので当然寒いわけです。

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キャンパスは「カレッジ」なのでこじんまりしています。

アメリカのカレッジに行くと驚くのが、教員と学生の距離が近いこと。

少人数教育のおかげなんでしょうね。

さて、ここにはロシア文化センターがあります。

Russian | Amherst Center for Russian Culture | Amherst College

中はこんな感じ。サモワールのコレクションがすごい。

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レーミゾフなど、亡命文学についての資料も多いです。

ナボコフ関係だと次の二つでしょうか。

 

Cataloged Archives | Shakhovskoy Family Papers | Amherst College

 

Cataloged Archives | Yurii [George] P. Ivask Papers | Amherst College

 

シャホフスカヤの文書は著書『ナボコフを探して』を書く際に使った(使わなかった)資料を見ることができます。

イヴァスクはロシア語雑誌の編集者として交友があった人物です。

どちらの人物も、資料がおさめられているのはここだけではないです。たとえばシャホフスカヤとナボコフのメインのやりとりは議会図書館のほうにはいっていて、ここではナボコフ本人というよりも関係者とのやりとりが収蔵されている印象です。イヴァスクもイェールの方が多く書簡を収蔵しています。とはいえ、ここでしか見れないものもあります。

ここは要予約です。資料も書庫から出してくる時間がかかるため、事前に申請しておく必要があります。

 

アマーストはエミリー・ディッキンソンのゆかりの地でもあります。

こじんまりした典型的な大学街で、滞在すると非常に落ち着くのでした。

 

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街で数少ないホテル。こぢんまりした雰囲気です。

ウラジーミル・ナボコフ「ヴェラへの手紙」『すばる』2017年12月号

本日発売の『すばる』12月号に、ナボコフ「ヴェラへの手紙」を訳出しております。

 

ウラジーミル・ナボコフ「ヴェラへの手紙」『すばる』2017年12月号、224―244頁。

 

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 『ヴェラへの手紙』は2014年に刊行されたナボコフが妻ヴェラにあてた書簡集です。

 

 原書は800頁!を超える大冊ですが、今回は『すばる』掲載にあたって9通の手紙をセレクトしました。訳出したのは以下の9通です。

 

・1923年11月8日

1924年1月17日

・1926年6月7日

・1926年6月8日

・1926年6月13日

・1926年6月15日

・1926年6月16日

・1926年7月6日

・1926年7月12日

 

内容を一部チラ見せ。なお、訳出にあたっては原典のロシア語版を使用しております。

 

ぼくの幸福、ぼくの黄金、信じがたい幸福よ! ぼくが全部きみのものだということを――ぼくの記憶、詩、高揚、心の中に湧きあがるつむじ風もみな――どう説明したらいいのだろう? きみがその言葉をどう発音するか聞かずには一語も書くことができないし、今まで生きてきた中で経験したものごとのどんな細部も――ぼくたちが分かち合わなかったものであれば――(こんなにも強い!)切なさを覚えずには思い出せないことをどう説明しようか? きみと分かち合わなかったものたちは、どうにも個人的で、いわく言い難いものと化してしまい、たんに道の曲がり角で見た日没だかなんだかも、そうではないもののようになってしまうんだ。ぼくの幸福よ、わかってもらえるだろうか?

――1923年11月8日

 

ベルリンを夢みるなんて思いもしなかった――そう、地上の楽園みたいに(天空の楽園なんてたぶん退屈さ――熾天使セラフィム】の羽がわんさか舞っていて、禁煙だってさ。でもときどき、天使たち自身が袖に隠して煙草を吸う――大天使がとおると煙草を投げすてる。それが流れ星なんだ)。月に一度ぐらい、お茶を飲みにおいでよ。いつかぼくの稼ぎが尽きたら、きみと一緒にアメリカに出稼ぎにいこう……。

――1924年1月17日

 

夕食まで新聞を読み(ママから手紙をもらった。暮らし向きは厳しいが、大丈夫なようだ)、それから肉の切れ端をそえたジャガイモとスイスチーズをたっぷり食べた。九時ごろきみへの手紙を書いた――それからメモ帳に手を伸ばしたときにふと、不在中に手紙がきていたことに気づいた――どういうわけか気づかなかったんだ。愛しいきみよ。なんておサルさんな手紙なんだい……。

――1926年6月7日

 

九通と言えども、解説合わせ原稿用紙換算で60枚近くもページをいただいております。

 

なお、この『ヴェラへの手紙』は今のところ邦訳出版される予定がありませんので、こちら『すばる』掲載版が最初で最後の翻訳の可能性もあります。

 

そういった意味でも貴重ですので、入手不能になる前にぜひご覧ください。

ノーベル文学賞「候補」の実情

11月4日の『読売新聞』夕刊9面に、「ノーベル文学賞「候補」の実情」という記事を寄稿しました。

 

10月1日の講演をもとに、日本人最多8度(2017年現在判明しているかぎり)候補になった西脇順三郎について書いたものになっています。

 

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よろしければご覧ください。

2017年度 ナボコフ協会秋の研究会

2017年度 ナボコフ協会秋の研究会が、以下の通り京都大学でおこなわれます。

The Nabokov Society of Japan

 

今年は外部から講師をお招きしてシンポジウム一件です。

ナボコフと科学」は、かつてはディーター・ツィンマー、カート・ジョンソン、最近では海外でもスティーヴ・ブラックウェルなどが精力的にとりくんでいるテーマでもありますね。海外ではすでにして膨大な蓄積があるトピックだけに、パネリストの先生方がどういう切り口で料理するのか楽しみです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来場する前にこの辺を読まれるとよりたのしめるかも。

ロベルト・ボラーニョ『チリ夜想曲』野谷文昭訳、白水社

訳者の野谷文昭先生より、ご恵投賜りました。恐縮しております。

 

 

 「ボラーニョ・コレクション」の最終巻ということで、完結もおめでとうございます。

いまどき外国文学で「コレクション」が出せるのはすごいですね。それだけ日本でもファンがいるということでしょう。

最近では、白水社だと「ゼーバルト・コレクション」でしょうか。これは全巻集めました。

「虚偽表示」に敏感になり、安易に「全集」と使えなくなった結果、浸透していったシリーズ名ということもありそうです。

 

そういえば、新潮社から「ナボコフ・コレクション」も出るようです。

私も少しだけ、参加する予定です。

ナボコフのアーカイヴを訪ねて⑥ コーネル大学カール・A・クロック図書館

アーカイヴ紀行の6回目です。今回はコーネル大学です。

コーネル大学の所在地であるニューヨーク州イサカについては前にナボコフの旧居ツアーをしました。

 

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 イサカの丘の上にあるコーネル大学、そのメインライブラリーのオーリン図書館の、

 

 

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地階にアーカイヴであるカール・A・クロック図書館(Carl A. Kroch Library)はあります。

 

「Carl A. Kroch」の画像検索結果

閲覧席はこんな感じ。

 

ナボコフが教鞭をとっていた大学だけあって、関連資料が充実していますし、図書館も積極的に資料を収集しようとしているようです。

 

書簡に関しては、やはりコーネル大学教授だったモーリス・ビショップとその妻アリソン・ビショップとの書簡が保管されています。

 

あとはパリでナボコフのエージェントをしていたドゥシア・エルガとの間の書簡が貴重です。中には悪名高いオリンピア・プレスのモーリス・ジロディアスとの書簡も含まれています。

 

ほかに興味深いのは、学生のとったナボコフの講義の授業ノートが保管されていることです。『文学講義』シリーズは原稿が全部残されていたわけではないので、編者はこのような学生のノートも活用していまあるかたちのものをつくったんですね。

 

 

 

 

ここには円城塔芥川賞受賞作品「道化師の蝶」のモチーフになった『見てごらん道化師を!』のヴェラへのイラスト付き献本も保管されています。

 

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また、コーネル大学には、ナボコフの折り畳み式捕虫網もあるそうです(未見)。

ただし、図書館ではなく博物館の方に買われたのではないでしょうか。さすがに捕虫網を見ても論文書けそうにないのであれですが。

 

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60年代以降、ナボコフとなかばセットのようにしてカメラにおさまったものです。

 

 

ここも写真OKです。それほど大きなアーカイヴではないんですが、司書の方が親切だった印象があります。だいたい、地方の図書館ほど外からきた人を歓迎してくれるんですよね。ただ、やはりイサカは遠いですね。

 

資料の充実度 ★★★★

使いやすさ  ★★★★★

たどりつくまでの大変さ ★★★★★