訳すのは「私」ブログ

書いたもの、訳したもの、いただいたものなど(ときどき記事)

【紹介】「エヴゲーニイ・ザミャーチン『われら』」『青春と読書』2月号、65頁。

集英社のPR誌の『青春と読書』2月号にエヴゲーニイ・ザミャーチン『われら』(小笠原豊樹訳、集英社文庫)の紹介を書きました。

 

 「エヴゲーニイ・ザミャーチン『われら』」『青春と読書』2月号、65頁。

seidoku.shueisha.co.jp

『青春と読書』は書店などで無料で配布されていますので、

見かけることがあればお手にとってごらんください。

上記のサイトから見本誌を申し込めます。また定期購読も可能です。)

 

 

 

ザミャーチンの『われら』は、オーウェル『1984』やハックスリー『すばらしき新世界』に先行するアンチユートピア小説の古典です。

 

未読の方はこの機会にぜひ。

 

ナボコフのアーカイヴを訪ねて⑪ ウェルズリー大学クラップ記念図書館

アーカイヴ紀行も11回目になりました。

 

今回はウェルズリー大学です。

ウェルズリー大学一般についての情報はこちらもご覧ください。

 

yakusunohawatashi.hatenablog.com

 

ボストン郊外のウェルズリーに位置する名門女子大であるウェルズリー大学は、ナボコフが40年代のほとんどをロシア語教師としてすごした大学です。

 

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そのクラップ図書館の上階に貴重な資料を集めたスペシャル・コレクションがあります。

 

ナボコフが勤務していた大学、ということで、さぞかし資料がありそうなのですが、実が1944年からウェルズリーの英文科で教鞭をとっていたシルヴィア・バークマンに、1949年6月8日にイサカからだした絵葉書一枚しか残っていません。

 

このはがきでナボコフは7月にユタ州ソルトレイクシティに行くので、あなたがカリフォルニアにいくのなら、途中でのせて車で連れていってくれたらありがたい、というようなことを書き送っています。

 

ちなみに、シルヴィア・バークマンはキャサリンマンスフィールドの研究書も書いた人物です。

 

Sylvia Berkman was born in 1907, graduated from high school in Blackstone, Massachusetts, and received her A.B. from Pembroke College in 1928, and advanced degrees from Radcliffe College (A.M. 1937 and Ph.D. 1942). Between 1928 to 1936 she worked first for the Harvard University Press and later the Merrymount Press in Boston, Massachusetts. In 1944 she joined the English faculty at Wellesley College where she remained until 1972. A visiting lecturer at Stanford University (1959, 1966), she was also a fellow at the Radcliffe Institute (1964-1965) and a member of the Corporation of Yaddo, beginning in 1966. She was the author of Katherine Mansfield: A Critical Study, 1951; and Blackberry Wilderness, 1959, a collection of short stories. Her short stories also appeared regularly in magazines. She died in Cambridge, Massachusetts, in 1992.

Berkman, Sylvia. Papers of Sylvia Berkman, 1909-1989: A Finding Aid

 

なお、ナボコフはシルヴィアを1956年にはグッゲンハイム・フェローに推薦しています。またダブルデイ社の編集者にも彼女をすすめています(1958年12月)。

 

書簡に関しては期待外れですが、それ以外にウェルズリーがナボコフを教員として採用した時の資料や、 のちにウェルズリーの学生にナボコフがどんな教師だったのかをインタヴューしたときの資料などが残っていました(が、いまOPACをサーチしてもでてこず…)

 

またナボコフがサインして送った本が、それなりの冊数、やはり所蔵されています。

 

ボストンからアムトラックで行かなくてはならないやや不便な土地ですが、前にも書いた通り、なかなか素敵な街なので一見の価値ありです。

 

資料の充実度 ★

使いやすさ  ★★★

街の雰囲気 ★★★★★

2018年展望

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 

2018年の刊行予定をアップしておきます。

うち、ナボコフ・コレクションをのぞいては、ここが初めての告知になるはずです。

 

・(共訳)ナボコフ・コレクション2巻『ルージン・ディフェンス 密偵』(新潮社)4月

 

コレクションの第二巻(配本順では三番目)に収録された中編『密偵』の訳を担当します。今回はロシア語版からの翻訳です。これは既訳では『目』として、英語版からの翻訳が白水社から小笠原豊樹訳ででています。小笠原訳は名訳ですので、そちらを読んでもらってもいいですし、ロシア語版と英語版ではどう違うのか比べてもらってもいいかと思います。

 

 

・(共訳)エミリー・アプター『翻訳地帯――新しい人文学の批評パラダイムにむけて(仮)』(慶応義塾大学出版会)春

 

「世界文学」関連文献翻訳プロジェクトとして、ダムロッシュ『世界文学とは何か?』、モレッティ『遠読――<世界文学システム>への挑戦』につづく第三弾として去年一年間まるまるかけて翻訳してきました。この三冊を読むと、現在のディシプリンとしての世界文学研究の基本がだいたいわかると思います。翻訳研究と比較文学、人文学、批評を結び付けようとした点で、すでに古典としての評価がある著作です。

 

 

・(単著)『アメリカのナボコフーー塗りかえられた自画像(仮)』(慶応義塾大学出版会)春

 

同じく慶応義塾大学出版会さんから。卓越したロシア語作家V・シーリンはいかにして世界的な英語作家ウラジーミル・ナボコフになったのか? 六年以上にわたるアメリカ各地のアーカイヴ調査の成果を踏まえ、研究の最新の知見を随所に盛りこみました。名声、出版、流通、翻訳、正典化といったキーワードを軸にして、「芸術家ナボコフ」の神話を徹底的に検証・解体します。『ナボコフ 訳すのは「私」――自己翻訳がひらくテクスト』(東京大学出版会)から七年ぶりのモノグラフかつ、前著の内容を徹底的に批判したものになるはずです。

 

・(共編)『アンソロジー企画(仮)』(三省堂)秋

 

アプターやモレッティが世界文学の理論編なら、こちらは実践編になるはずです。この本も2016年の秋から一年以上にわたって編集会議をおこなってきました。現在の世界で、文学を読むとはどういうことなのか。それは耳ざわりのいいことばだけではなく、片隅から聞こえてくる「ノイズ」のようなものにも耳を傾けるような態度になるはずです。

 

2018年は、この四冊が出ていくはずです。また詳しい内容などここで告知していくと思います。よろしくお願いいたします。

 

 

2017年回顧

2017年は力を溜める一年でした。

自分の仕事で印象深かったものを三つ、あげておきます。

 

1 "Nabokov and Hearn: Where the Transatlantic Imagination Meets the Transpacific Imagination" 

yakusunohawatashi.hatenablog.com

五年越しの論文がようやく刊行されました。

 

2 「ヴェラへの手紙」抄訳

yakusunohawatashi.hatenablog.com

『すばる』さんにお世話になった一年でした。

 

3 「遠読以後――デジタルヒューマニティーズと文学研究」

yakusunohawatashi.hatenablog.com

短いですが、『UP』にも寄稿できました。

 

来年の刊行予定は明日アップしようと思います。

みなさん、よいお年をお迎えください。

 

なお、今年出た・読んだ本で三つあげるなら――(ペイしなそうな人文書・研究書の翻訳から選んでみました)。

 

・ 張隆溪『アレゴレシス―東洋と西洋の文学と文学理論の翻訳可能性』鈴木章能、鳥飼真人訳、水声社(※2016年12月刊行)

 

・ジゼル・サピロ『文学社会学とはなにか』鈴木智之、松下優一訳、世界思想社
 
・ウィリアム・マガイアー『ボーリンゲン:過去を集める冒険』高山宏訳、白水社
 

・(次点)ジェイムズ・キャントン 『世界文学大図鑑』越前敏弥訳、三省堂

 

 

 

 

 

小川公代、村田真一、吉村和明編『文学とアダプテーション――ヨーロッパの文化的変容』春風社

奥彩子先生からご共著書のご恵投いただきました。

 

小川公代、村田真一吉村和明編『文学とアダプテーション――ヨーロッパの文化的変容』春風社

 

 

 

 

 

最近、「アダプテーション」が流行なのでしょうか。

先日は波戸岡先生の『映画原作派のためのアダプテーション入門――フィッツジェラルドからピンチョンまで』(彩流社)を読んだところでした。

 

奥先生、どうもありがとうございました。

 

明日か明後日、来年の刊行予定をアップしたいと思います!

日本ナボコフ協会学会誌『KRUG』10

中田先生と編集を担当した日本ナボコフ協会の学会誌『KRUG』の10号が刊行されています。

 

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特別講演(Special Lecture)
富士川義之ナボコフと英国の伝記文学」 1


書評(Book Review)
深澤明利 ウラジーミル・ナボコフ『見てごらん道化師(ハーレクイン)を!』(メドロック皆尾麻弥訳) 15
諫早勇一 ウラジーミル・ナボコフナボコフの塊――エッセイ集1921-1975』 (秋草俊一郎編訳) 17
中田晶子 Leona Toker, Nabokov: The Mystery of Literary Structure 22
若島正 Marijeta Bozovic, Nabokov’s Canon: From Onegin to Ada 28
三浦笙子 Robert Roper, Nabokov in America: On the Road to Lolita 32

研究発表要旨(Synopsis)
Vyatcheslav Bart, An Artist of Thought: Nabokov as Anti-Critic in Light of Mikhail Epstein’s “Philosophy of the Possible” 39


雑録 (Miscellany) 73

 

一冊1000円でバックナンバーもふくめ頒布もしております。お問い合わせは事務局までお願いします。

 

The Nabokov Society of Japan

ナボコフのアーカイヴを訪ねて⑩ プリンストン大学ファイアストーン図書館

アーカイヴ紀行の10回目です。

今回紹介するのは、南部より一転、プリンストン大学です。

ニューヨークから電車で南にいったプリンストンに位置する大学です。

メトロポリスの喧騒を離れ、町は静かで、キャンパスはすばらしく英国風です。

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こんなところで勉強出来たら最高ですね。

 

そのメインライブラリーであるファイアストーン図書館のアーカイヴには、

ナボコフ関係の資料も多少収蔵されています。

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(行った当時は工事改修中でした)

 

ひとつは、ヘンリー・ホルト社の編集者をしていた、モダニズム詩人アレン・テイトとナボコフの書簡です。

 

Allen Tate Papers (C0106) -- Series 2: Correspondence -- Subseries 2C: General Correspondence -- Nabokov, Vladimir

 

1947年、ナボコフは英語第二作『ベンドシニスター』をヘンリー・ホルト社より出版しました。その際、社がテイトをつうじて提示したアドヴァンスは2000ドルという、当時のナボコフにとっては非常な高額でした。

 

このとき、ナボコフはウィルソンに「テイトに低頭!」と書き送っているほどです。

 

テイトとナボコフのやりとりは、テイトがホルトをじきにやめてしまったこともあって、実はそれほど量があるわけではないですが、ナボコフがテイトに非常に恩を感じていたことがわかります。

 

なお、ここの図書館はナボコフが翻訳の際に参照したアレクサンドル・プーシキン『エヴゲーニイ・オネーギン』を2010年に購入し、それを全ページ、スキャンしてデジタル・アーカイヴで公開しました。

 

blogs.princeton.edu

blogs.princeton.edu

チュッチェフの詩集もあります。

 

こちらはいながらにしてナボコフの書きこみを見ることができるわけです。

今後はこのようなデジタル化と情報公開が進めばいいですね。

 

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なお、プリンストン大学の美術館は(アメリカの金持ちの私立大学によくあるように)非常に充実しているので、それだけでも訪問の価値があります。

 

 

資料の充実度 ★

使いやすさ  ★★★★★

キャンパスの英国度 ★★★★