訳すのは「私」ブログ

書いたもの、訳したもの、いただいたものなど(ときどき記事)

ナボコフのアーカイヴを訪ねて⓪

唐突ですが、今度からナボコフのアーカイヴについての情報を不定期で何回かアップしていきたいと思います。

 

ナボコフの資料を収蔵している図書館・文書館はいくつかありますが、全米に散らばっているというのが実情です。

 

 もちろんメジャーなところは数カ所あるのですが、意外なところに意外な資料があることも多いです(その逆もしかりです)。

ここで言う「資料」はいくつか種類があります。

 

1、草稿、原稿(日記などふくむ)

 

2、ゲラ

 

3、書簡

 

4、貴重書、稀覯本

 

5、その他

 

1があるところはごく限られた場所になります。それこそバーグ・コレクションや、議会図書館などです。これらは基本的にナボコフ(とその遺族)自身が寄贈・販売したとことです。

 

2は作家だけでなく出版社にも保存されている場合が多く、出版社(あるいは出版社が寄贈した)のアーカイヴがあればそこでも閲覧可能です。

 

3の場合、書簡はだすときに「写し(カーボンコピー)」がとられているケースが多いです。その場合、出した人間の手元に「写し」、受け取った人間の手元に原本が残ることになります。それぞれが別々の機関に預ければ、同じ手紙が二カ所で見れることになります。そのため、手紙が一番各地の図書館に拡散して収蔵されています。

 

 4の場合、著者の手択本は1と同じかぎられたアーカイヴに所蔵されていますが、献本(insrcibed copies)は各地の図書館に散っていることになります。また手択本でもオークションなどを経て、ほかの図書館に所蔵されることもあります。

 

私の場合、3の書簡を2010年ごろからかなり閲覧してきました。なんらかのメモをとったものだけで1500通ぐらいは見たはずです(メモをとらずに流し読みだともっと多いです)。閲覧した機関も10カ所以上に及びます。

 

こういった調査の成果の一部はすでに出版され、また今後も出版される予定ですが、調査のほとんどが科研費補助金でおこなわれたということもあり、情報の共有の観点からも、忘れないうちに(情報が古くなりすぎないうちに)メモを残しておこうと思います。今後、ナボコフ関連で調査に行く方の役に立てば幸いです。

ペストの記憶

訳者の武田先生にご恵投いただきました。ありがとうございます。

 

中公文庫版で読みましたが、めっぽう面白かった記憶があります。

以前、ある先生が「カミュの『ペスト』よりおもしろい」と言っていましたが、

それも納得です。

 

 

解説も充実しているようで、再読するのが楽しみです。

武田先生、どうもありがとうございました。

 

ノーベル文学賞のしくみ――その歴史・権威・審査について

10月1日に勤務先で特別講演の第二回目を開催することになりました(詳細ポスター)。

予約不要・無料ですので、関心のある方はおさそいあわせのうえおいでください。

 

講演内容

 今年の発表も10月中旬にひかえたノーベル文学賞は、言うまでもなく世界でもっとも有名な文学賞でしょう。昨年は歌手のボブ・ディランが受賞したことでも話題になりました。アジアで二人目、日本人初の受賞となった川端康成大江健三郎や、毎年、「有力候補」と報道される村上春樹など、日本人ともかかわりの深い賞でもあります。ノーベル賞と翻訳の問題、ほかの日本人作家候補など、講師の最近の研究を紹介しながら、歴史・審査のプロセスなどわかりやすくお話しします。 

 

 

 

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「科学の興奮と詩の精密さ――ウラジーミル・ナボコフの文学」『知のフィールドガイド 分断された時代を生きる』白水社

「科学の興奮と詩の精密さ――ウラジーミル・ナボコフの文学」という文章を、東京大学教養学部編『知のフィールドガイド 分断された時代を生きる』(白水社)に寄稿させていただきました。

 

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目次はこちら。

知のフィールドガイド 分断された時代を生きる - 白水社

 

 

 20名以上の(私をのぞいた)豪華執筆陣が寄稿しております。

 

私の寄稿は

yakusunohawatashi.hatenablog.com

に、

 

yakusunohawatashi.hatenablog.com

の内容をくわえたものになっております。

 

もともとは私もかつて所属していた

東京大学教養学部教養教育高度化機構でおこなっていた

「高校生のための金曜特別講座」での講義をもとに

編集したものとなっております。

 

いままでの論文と重複するところも多いですが(『訳すのは「私」』六章、「日本文学のなかのナボコフ」と重複する部分あり)、

興味がある方はぜひお手にとってごらんください。

文学の値打ち――古書店のカタログ、オークション、死後出版――ナボコフの場合

8月4日に勤務先で特別講演を開催することになりました(詳細ポスター)。

予約不要・無料ですので、関心のある方はおさそいあわせのうえおいでください。

 

講演内容

「文学の価値」とはなにによって決まるのでしょうか?――今回は作家ウラジーミル・ナボコフを例にとってこの疑問を考えてみたいと思います。ナボコフの小説『ロリータ』は、全世界で五千万部以上を売りあげたことで知られています。それだけでなく、現在では二十世紀を代表する作家という評価をえています。本講演では、こうした評価を、作家とその遺族が、いかに獲得し、「死後出版」によって不動のものにしていったのか、それと同期してその「商品価値」がどう変わったのかを、オークション古書店のカタログなどで具体的に見ていきます。

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『読者ネットワークの拡大と文学環境の変化 ─19世紀以降にみる英米出版事情』音羽書房鶴見書店

 後藤篤さんから共著書『読者ネットワークの拡大と文学環境の変化 ─19世紀以降にみる英米出版事情』(音羽書房鶴見書店)をいただきました。

 

後藤さんは「書物の流離譚――『ロリータ』の大西洋横断的ネットワーク」という章をお書きになっています。

 

全11章+コラムで英米の出版事情についてさまざまな角度から光をあてた本になっています。

 

おもしろいのは各論文に「コメント」として 別の執筆者からのコメントがついていることで、類書にないこころみで、疑似シンポジウムのようです。

 

こういったコメントの往来をつうじて、文学コミュニティが形成されていくのだなあ、と思った次第です。

 

 

 

後藤さんには『アメリカン・ロードの物語学』につづいて

本をつぎつぎといただいてしまい、恐縮しております(自分でも買います)。

 

yakusunohawatashi.hatenablog.com

 

後藤さん、どうもありがとうございました。

ナボコフ没後40周年特別企画アンケート

7月2日はナボコフの命日です。1977年7月2日にナボコフは亡くなりました。

 

マキシム・シュライヤー先生から依頼をいただき、

ナボコフ没後40周年特別企画アンケートに回答しました。

www.colta.ru

ロシア語ですが。

 

回答者は

ユーリイ・レヴィング、アンドレイ・バビコフ、アレクサンドル・ドリーニン、ブライアン・ボイド、ディーター・ツィンマー、バーバラ・ワイリー、デイヴィッド・ランプトンなどそうそうたる顔ぶれ(私以外)。

先日の論集もそうですが、

いろいろと企画があるようで、日本も盛り上げていきたいですね。