共編書『世界文学アンソロジーーーいまからはじめる』(三省堂)が刊行になりました。
2016年より月一回のペースで約一年間、編者と会議を重ね、そのあと延々と編集調整作業をくりかえしてきました。その結果をリリースできるのは、またひとつ肩の荷がおりる感じでうれしいです。
27作品のうち、約半分の12編が新訳、うち2編が初訳です。
私はチヌア・アチェベ「終わりの始まり」の新訳と、まえがき、読書案内をふたつ書いています。
まえがき 秋草俊一郎
第1章 言葉──すべてのはじまり
「ことば」エミリー・ディキンスン(谷崎由依訳)
「由煕」李良枝
「ヘルツル真夜中に消える」サイイド・カシューア(細田和江訳)
第2章 自己──まるで檻のような
「わたしは逃亡者」フェルナンド・ペソーア(福嶋伸洋訳)
「影法師」ハンス・クリスチャン・アンデルセン(大畑末吉訳)
「なにかが首のまわりに」チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ
(くぼたのぞみ訳)第3章 孤独──記憶はさいなむ
「あの日々」フォルーグ・ファッロフザード(鈴木珠里訳)
第4章 家族──かけがえのない重さ
「子供」石垣りん
「私の兄さん」プレームチャンド(坂田貞二訳)
「終わりの始まり」チヌア・アチェベ(秋草俊一郎訳)
第5章 戦争──崩れゆく日常
「死のフーガ」パウル・ツェラーン(平野嘉彦訳)
「『騎兵隊』より二編」イサーク・バーベリ(中村唯史訳)
第6章 環境──わたしたちを取りまく世界
「詩二編」ファン・ラモン・ヒメネス(伊藤武好・伊藤百合子訳)
「神々の村」石牟礼道子
「故障──ある日について、いくつかの報告」クリスタ・ヴォルフ
(中丸禎子訳)第7章 愛──いつだってつなわたり
「ジタネット」コレット(工藤庸子訳)
「ある夫婦の冒険」イタロ・カルヴィーノ(和田忠彦訳)
第8章 悪──絶対やってはいけません
「夏の暑い日のこと……」フランツ・カフカ(川島隆訳)
「神の恵みがありますように」アズィズ・ネスィン(護雅夫訳)
「毒もみの好きな署長さん」宮沢賢治
第9章 生死──この世のむこう側
「あのおだやかな夜におとなしく入ってはいけない」ディラン・トマス
(田代尚路訳)「沖合の少女」ジュール・シュペルヴィエル(福田美雪訳)
「世界でいちばん美しい溺れびと」ガブリエル・ガルシア=マルケス
(山辺弦訳)
読書案内(ブックガイド)
出典一覧/訳者紹介/編者紹介
本書はもちろん独立したアンソロジーとしても楽しめますが、「世界文学プロジェクト」とでもよぶべきものの一環としても読むことができます。
デイヴィッド・ダムロッシュ『世界文学とは何か?』国書刊行会、2011年
フランコ・モレッティ『遠読――<世界文学システム>への挑戦』みすず書房、2016年
『文学 特集 世界文学の語り方』岩波書店、17巻5号、2016年
上記の本が理論編だとするなら、本アンソロジーは実践編ですね。
ぜひ、よろしくお願いいたします。