著者の頭木弘樹さんからご恵投いただきました。どうもありがとうございます。
頭木弘樹『落語を聴いてみたけど面白くなかった人へ』ちくま文庫
なぜ落ちは笑えない? どうして話が途中で終わるのか、などなど。落語に関する素直な疑問を解き明かしながら、落語ならではの大いなる魅力に迫る。
☆頭木さんは今月、すでに一冊本を出されています。
訳者の野中先生からご訳書をいただきました。どうもありがとうございました。
エルヴィン・ナギ『革命記念日に生まれて――子どもの目で見た日本、ソ連』野中進訳、東洋書店新社
ソ連史の、リアル。
モスクワに生まれ、日本で育ち、粛清で父を失う――時代に翻弄された人生は、しかし、典型的なソ連人のそれでもあった。スターリン体制、独ソ戦、長い長い全体主義の時代…ソ連に生きること、の手触りを直に伝える回想録。
「人民の敵」の子、外国育ち、ユダヤ人という、少数者としての著者の視点は、ソ連社会を「異化」し、その本質をあぶりだす。日本滞在時の回想も、外国人、それも子どもの目から見た当時の世相が見て取れて興味深い。解説沢田和彦。
粛清された父のKGB尋問記録(第三部「父のファイル」)も貴重。
これは非常に貴重な資料の翻訳ですね。在日ロシア人というと、
どちらかというと白系のほうの資料が多く紹介されているので、
在日ソ連人の生活がわかるという点で、色々な観点から役立てることができそうです。
野中先生、どうもありがとうございました。
高橋由貴・伊藤豊先生からご恵投賜りました。どうもありがとうございます。
日本比較文学会東北支部編『問題としての「アメリカ」――比較文学・比較文化の視点から』晃洋書房
国も個人も時代も、影響を受けずにはいられない存在、アメリカ。近代日本文学・文化の領域に現れた「アメリカ」の姿を様々な主題に沿って検討し、知識人や大衆の間の「アメリカ言説」の展開を日本以外の事例も含めて考察する。
川端、三島、村上春樹、ブロツキーや「386 世代」の韓国映画監督たち。占領、東西対立、大衆文化の展開など、多様なトピックをめぐって近代日本、そして世界に展開した「言説としてのアメリカ」の内実を、比較文学および比較文化論的な分析によって明らかにする論集。
はじめに 森田直子
第Ⅰ部 日本文化における「アメリカ」
第1章 川端康成『伊豆の踊子』とThe Izu Dancer――アメリカ冷戦期文化政策と翻訳された自然――
江口真規
第2章 民主主義とエマソン――高木八尺におけるアメリカ言説のアイロニー――小林竜一
第3章 大衆社会の「美」に逆らうもの─―三島由紀夫の批評的創造――山﨑義光
第4章 村上春樹の『地獄の黙示録』受容とヴェトナム戦争――エッセイ『同時代としてのアメリカ』から小説「午後の最後の芝生」へ――
高橋由貴
第5章 ふたつの名前を持つ映画について――谷崎潤一郎「人面疽」論――森岡卓司
第6章 「アメリカ」を書き直す――川端康成の1930年前後をめぐって――
仁平政人
第Ⅱ部 アメリカ言説の諸相
第7章 親愛なるアメリカの不在――ロシア語亡命詩人ブロツキーの詩学・世界図――
第8章 ポストコロニアルなアメリカ表象へ――韓国における〈戦後〉のアメリカ表象をめぐって――
佐野正人
第9章 ゾンビ――アポカリプス的世界観から生み出される未来への希望――
梁 姫淑
第10章 司馬遼太郎が見たアメリカ――比較文化心理学・文化心理学・異文化マネジメントの観点から――
金子 淳
第11章 江藤淳の〈反米〉と「私」――『アメリカと私』再読――
塩谷昌弘
第12章 反米主義――「感情のうねり」をめぐる私考――
伊藤 豊
あとがき ――「アメリカ」という問題群――伊藤 豊・森岡卓司
頭木弘樹さんからご著書を恵投いただきました。
出版社の紹介から引用します。
「食べて出すだけ」の人生は……なんて素晴らしいのだろう!
「飢えから、栄養不足による飢えを引いたもの」を体験した人はあまりいない。
点滴によって栄養は足りているのに、「喉」は何かを飲み込みたいと言い、「顎」は犬のように骨の形をしたガムを噛みたいと叫び、「舌」はとにかく味のするものを! と懇願してくるのだと著者はいう。
こうして、食べて出すことがうまくできないと、日常は経験したことのない戦いの場となる。
絶食後に始めて口に入れたヨーグルトが爆発するとは?
茫然と便の海に立っているときに看護師から雑巾を手渡されたときの気分は?
便が心配でひきこもり生活が続いた後、外を歩くと風景が後ろに流れていくとは?
食べて出すだけの日常とは、何かを為すためのスタート地点ではなく、偉大な成果であることが心底わかる傑作。
切実さの狭間に漂う不思議なユーモアが、何が「ケア」なのかを教えてくれる。
しかしこのような大病がなければ「文学紹介者」としての著者の現在はなかったかもしれない(いや、百パーセントなかった)と考えるとなんとも不思議なものです。
頭木さん、どうもありがとうございました。
書評を書かせていただく機会が増えてきたこともあり、
一度いままで書いたものをこのエントリにまとめておきます(随時追加します)。
「David Damrosch, What Is World Literature? Princeton, New Jersey, Princeton UP, 2003, 324pp+xiii」『Slavistika』(21/22)、2006年、143-146頁。
「Catriona Kelly Russian Literature: A Very Short Introduction. Oxford: Oxford UP, 2001, 184 pages; 20 halftones & 2 maps; 4-1/2 x 7」『Slavistik』 (23)、2007年、237-240頁。
「河野至恩著 『世界の読者に伝えるということ』:(講談社現代新書、二〇一四年)」『比較文学』57、2014年、172-173頁。
「郭南燕著『志賀直哉で「世界文学」を読み解く』:(作品社、二〇一六年)」『比較文学』59、2017年、213-215頁。
「既成概念の枠を広げ新しい読者層を開拓する野心的な試み ナボコフ・コレクション全五冊(新潮社)」『週刊読書人』2017年12月8日。
「Duncan White, Nabokov and His Books: Between Late Modernism and the Literary Marketplace, Oxford: Oxford University Press, 2017. 234 pp.」『KRUG(New Series)』11、2018年、84-87頁。
「想像力という病――『われら』/エヴゲーニイ・ザミャーチン著、小笠原豊樹訳(集英社文庫)」『青春と読書』2018年2月号、65頁。
「ジョン・ネイスン『ニッポン放浪記――ジョン・ネイスン回想録』前澤浩子訳、岩波書店」『河北新報』2018年1月21日号ほか。
「ベン・ブラット『数字が明かす小説の秘密――スティーヴン・キング、J・K・ローリングからナボコフまで』坪野圭介訳、DU BOOKS」『北日本新聞』2018年8月12日ほか。
「橋本陽介『ノーベル文学賞を読む――ガルシア=マルケスからカズオ・イシグロまで』角川選書」『琉球新聞』2018年10月14日ほか。
「鴻巣友季子『謎とき「風と共に去りぬ」――矛盾と葛藤にみちた世界文学』新潮選書」『静岡新聞』 2019年5月26日ほか。
「[現代×文芸 名著60]宮本輝『骸骨ビルの庭 上・下』講談社文庫」『読売新聞』2019年5月9日。
「[現代×文芸 名著60]長嶋有『ジャージの二人』集英社文庫」『読売新聞』2019年6月27日。
「[現代×文芸 名著60]町田康『夫婦茶碗』新潮文庫」『読売新聞』2019年8月20日。
「[現代×文芸 名著60]筒井康隆『朝のガスパール』新潮文庫ほか」『読売新聞』2019年10月22日。
「[現代×文芸 名著60]古川日出夫『女たち三百人の裏切りの書』新潮社『読売新聞』2019年12月22日。
「ノラ・イクステナ『ソビエト・ミルクーーラトヴィア母娘の記憶』黒沢歩訳、新評論」『日本経済新聞』2019年12月7日。
「モーシン・ハミッド『西への出口』藤井光訳、新潮クレストブックス」『日本経済新聞』2020年2月15日。
「コーリー・スタンパー『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』鴻巣友季子・竹内要江・木下眞穂・ラッシャー貴子・手嶋由美子・井口富美子訳、左右社」『日本経済新聞』2020年5月23日。
「「学問としての翻訳」を日本に探り出そうとする試み 佐藤=ロスベアグ・ナナ『学問としての翻訳』みすず書房」『図書新聞』3454号、2020年7月4日。
「[村上春樹『一人称単数』どう読む]「自伝的長編の「予告」?」」『読売新聞』2020年8月1日夕刊。
[文庫×世界文学 名著60]愛の記憶<5>「背徳の書」 謎解きに誘う…『ロリータ』ウラジーミル・ナボコフ著 『読売新聞』2020年11月8日
「坪井秀人・瀧井一博・白石恵理・小田龍哉編『越境する歴史学と世界文学』(臨川書店、二〇二〇年)」『比較文学』第63巻、2021年、157ー159頁。
本日の『読売新聞』夕刊に「村上春樹『一人称単数』どう読む」というお題で
文章を寄稿させていただきました(800字)。
よろしければご覧ください。
村上春樹さんの新刊「一人称単数」を、プロの読み手はどう読んだのか。1日付け夕刊文化面に、翻訳家の鴻巣友季子さんと日大准教授の比較文学者、秋草俊一郎さんにダブル寄稿をいただきました。#村上春樹 #一人称単数 pic.twitter.com/6NQaX8LgHF
— 読売新聞 文化部 (@YOL_culture) August 1, 2020