訳すのは「私」ブログ

書いたもの、訳したもの、いただいたものなど(ときどき記事)

フランコ・モレッティ『遠読』みすず書房②:目次など

どうやら、『ナボコフの塊』よりフランコモレッティ『遠読』(みすず書房)のほうが先に出そうです。タイトルの(仮)もとれました。

 

 

 

目次

 

近代ヨーロッパ文学――地理的なスケッチ

 

世界文学への試論

 

文学の屠場

 

プラネット・ハリウッド

 

さらなる試論

 

進化、世界システム、世界文学

 

始まりの終わり――クリストファー・プレンダーガストへの応答

 

小説――歴史と理論

 

スタイル株式会社――7000タイトルの省察(1740年から1850年のイギリス小説)

 

ネットワーク理論、プロット分析

 

訳者あとがき

 

索引

 

問題作「世界文学への試論」も完全収録しております。

 

原書についてはすでに作家の円城塔さんが昨年書評を書いていますので、

一部引用――

 

世界文学なるものを語るためにはどうすることができるのか。人間に世界文学なる巨大すぎるものを考えることができるのだろうか。まだ考えることができずにいるなら、どういうアプローチを進めていくべきなのか。とりあえず遠くから眺めてみようというのがモレッティの主張であり、統計データとかをきちんととるところからはじめよう、という。〔中略〕そういう全体像の把握さえ誰もしていないというのは問題だ。〔中略〕そういうことを調べずに、世界文学について語るのはただの思い込みでしかないかも知れない。

 

「遠くから見る世界文学」『本の雑誌』2015年5月号

 

6月11日にちゃんとでるんでしょうか…。

Nabokov and Laughlin: A Making of an American Writer

"Nabokov and Laughlin: A Making of an American Writer"

という論文をNabokov Online Journalの10/11号(2016/2017)に掲載してもらいました。

 

*最新号はなにもしなくても全文読めるのかと思っていましたが、

やはり登録(無料)が必要なようです。

こちらで全文読むことができます(pdfがひらきます。結構重いです)。

(いまの号の目次)

http://www.nabokovonline.com/current-volume.html

 

1940年にアメリカにやってきたナボコフが、いかに同地の「文壇」に同化していったのかを、編集者とのつきあいからさぐったものになっております。

 

 

NOJは前々号にも論文が掲載されたこともあり、

その際に多少説明しているので、こちらをご覧ください。

 

ちなみに、前号のNOJでは「『賜物』続編騒動」がまきおこっていました。

(これについては昨年エントリで書きました)

2015-09-25 - 訳すのは「私」ブログ

 

今号では、そのドリーニンの批判をうけて、バビコフによる反論と、

さらにドリーニンによる再批判が掲載されています。

この論争もいったんこれで落としどころでしょうか?

 

同じロシア人とはいえ、

(所属先)アメリカ/ロシア、旧世代/新世代、職業研究者/アマチュア

といった対立が表にでてきたな、といった感じがします。

 

日本だと、「アメリカ系の研究者/ロシア系の研究者」といった

非常に単純な図式で研究の流れをとらえがちなのですが、

 人材の流動性が高まっている現在、構図はより複雑化していることを認識する必要があるでしょう。

 

 

特集は「ナボコフと大衆文化」ですが(しかしこのテーマで日本の寄稿者がいないのはいかにも残念)、

ナボコフ本の世界一のコレクターであるMichael Juliarや、

黎明期のナボコフ研究をけん引したDonald Barton Johnsonのインタヴューなど、

特集や論文以外も充実しています。

 

ナボコフの誕生日にあわせて、4月22日から公開されていましたが、

ばたばたしていて告知が遅れました。

 

次号はナボコフの没後40周年に合わせて刊行・特集が組まれるのでしょうね。

 

興味・関心のおありのかたはお読みください。

 

(↓論文でとりあげたゴーゴリ論。この邦訳版にもいろいろつっこみどころがあるのですが、今回はスルーですね。)

 

 

森泉岳士『ハルはめぐりて』(エンターブレイン)

森泉岳士さんの『ハルはめぐりて』(エンターブレイン)の英語副題作成に協力しました。

 

中学生の「ハル」が、ベトナム、台湾、モンゴル、日本の温泉地を旅するのですが、

森泉さんの筆による異国の風景描写がひとつの読みどころになっています。

 

 

  もうすでに『カフカの「城」他三篇』(河出書房新社)で文学ファンにもすっかりおなじみな森泉さんですが、 はじめにデビュー作「森のマリー」、それから「小夜子、かけるかける」を『コミックビーム』で読んだときには震えましたよね。月並みですが、新しい才能が世に出る瞬間を目の当たりにしている!という感じがして。

 

 

 

 ↑「森のマリー」、「小夜子、かけるかける」も収録の短編集『耳は忘れない』。

そういえばここに収録されている表題作の「耳は忘れない」でも主人公はインド旅行に

いきますね。 これは実体験だったのが、今回のあとがきを読むとわかります。

 

たいしたお手伝いはしていないですが、尊敬するクリエイターと仕事ができたのは大変うれしかったです。

『英米文学における父の諸変奏――安田章一郎先生百寿記念論集』(英宝社)

ご共著書を中田晶子先生からご恵贈いただきました。

 

 

  鈴木俊次、滝川睦、平林美都子、山口均編『英米文学における父の諸変奏――安田章一郎先生百寿記念論集』、英宝社、2016

 

中田先生は「顕在と潜在―ナボコフにおける父の形象」という論文を寄稿しておられます(サブタイトルどおりナボコフの主要作品における父親像をたどった論文になっています。たしかにナボコフにとって重要なのは圧倒的に母より父なんですよね)。

 

中田先生、ありがとうございました。

 

まだ拾い読みの段階ですが、昨年、愛知学院大学でお会いした山口均先生の「TSE@IAS」もおもしろかったです。原爆の父オッペンハイマーがT・S・エリオットのファンだったという意外さ。

 

 

例によってAmazonは少部数の本はまともに扱ってくれないようですが、

版元の英宝社には在庫があると思います。

 

 

ナボコフとハーン トランス・アトランティックな想像力がトランス・パシフィック な想像力と出会うところ ――あるいは文学的バタフライエフェクト

前回のエントリで『れにくさ』の5号が公開になったことを書きましたが、

最新号の6号にも論文を寄稿しております。

 

 

ナボコフとハーン トランス・アトランティックな想像力がトランス・パシフィック な想像力と出会うところ ――あるいは文学的バタフライエフェクト」『れにくさ』6号、446-459頁。

 

論文の内容は、ナボコフの引用した一編の「ハイク」をめぐるものになっております。

(だれの俳句で、なんで引用したのか)

 

著作権の関係で写真を載せられなかったのですが、

そのナボコフが引用したハイクがのった画像はこちらにあります。

上から二番目の、蝶の絵がかかれたページです。

(ニューヨーク公共図書館が1999年に開催した展覧会Nabokov Under Glassのページにとびます)

 

こっちのタイトルをつけてくれたのは友人の翻訳家デイヴィッド・ボイドです。

 どうもありがとう。

 

関心のあるかたは大学図書館などでお読みください。

こちらも、次号の『れにくさ』が刊行されれば(何年後かわかりませんが)、オープンアクセスになるはずです。

 

5号の『れにくさ』は「柴田元幸退官記念号」で三冊の大ボリュームでしたが、

6号の『れにくさ』は「特集 ロシア・中東欧」で、2015年のICCEESを総括したものになっており、前号ほどではないですが、560ページの大冊になっております。

研究ノート:ロスト・イン・ミストランスレーション:ケネス・レクスロスの擬翻訳『摩利支子の愛の歌』をめぐって

以前書いた論文ですが、ここにあげるのを忘れていました。

今回、雑誌の最新号が刊行された都合で、電子版がレポジトリで読めるようになったので、エントリとしてあげておきます。

 

「ロスト・イン・ミストランスレーション:ケネス・レクスロスの擬翻訳『摩利支子の愛の歌』をめぐって」『れにくさ』5巻2号、2014年、397-411頁。
 
 
PDFはこちらからどうぞ。
 
 
アメリカのモダニスト詩人レクスロスによる、謎の日本人詩人摩利支子の「翻訳」をとりあげております。
 
(ちなみに、論文ではなく「研究ノート」にしてみたのは、内容もそうですが、
一度研究ノートを書いてみたかったから、というのがあります。なんかかっこいい気がして)
 
 
 
ちなみに論考のタイトルは友人の詩人ローレン・グッドマンがつけてくれました。
 
なお、この号の『れにくさ』は「柴田元幸教授退官記念号」で、
三巻組の大ヴォリューム、豪華執筆陣になっております。
 
こちらから無料ですべて読めますので、関心のある方はごらんください。
CiNiiの検索結果にとびます。本来ならリポジトリのリンクを貼るべきですが、貼り方がわからなかった・・・)
 

http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/bitstream/2261/59254/1/reny005322.pdf

ここに柴田先生の業績リスト(長い!)がありますけど、

自分が編集者なら書評集とか作ってみようとするでしょうね。

日本ナボコフ協会大会のお知らせ

5月9日に東京大学本郷キャンパスでおこなわれます。

くわしくは以下のサイトをごらんください。

The Nabokov Society of Japan

 

研究発表一本、シンポジウムひとつの予定です。

 

ふるってご参加ください。