訳すのは「私」ブログ

書いたもの、訳したもの、いただいたものなど(ときどき記事)

カメル・ダーウド『もうひとつの『異邦人』――ムルソー再捜査』鵜戸聡訳、水声社

また鵜戸さんからいただきました。どうもありがとうございます。

カメル・ダーウド『もうひとつの『異邦人』――ムルソー再捜査』鵜戸聡訳、水声社

 

カミュ『異邦人』を殺されたアラブ人の側から語りなおすという本書は、(すでに刊行以降、日本でも書評がいくつも書かれていますが、)この本が書かれるまでにいたった前史についての訳者あとがきも勉強になります。

 

しかし、対抗言説によって真実の座を奪い返すというわけではない。語り手は殺された兄を語る母の「ことば」に呪縛され、亡き兄の影となりながらも「母のものではないことば」へと逃走する。フィクションの先生を批判する本書は、同時にフィクションの力に、それを作り出すことばの権能に意識的だ。「訳者あとがき」196頁

 

honto.jp

鵜戸さん、どうもありがとうございました。

庄司宏子編著『国民国家と文学――植民地主義からグローバリゼーションまで』

庄司宏子編著『国民国家と文学――植民地主義からグローバリゼーションまで』(作品社)を鵜戸聡さんにご恵投いただきました。どうもありがとうございます。

 

庄司宏子「国民国家と文学 」

鵜戸聡「「アルジェリア人」とは誰か?」

溝口昭子「国民国家を希求する人びと」

結城正美「非場所の文化」 

吉田裕「植民地主義と情動、そして心的な生のゆくえ」 

小林英里「バラよりもハイビスカスを!」 

北原妙子「ヘンリー・ジェイムズとイタリア」 

大辻都「海を渡る「ちびジャン」民話」 

庄司宏子「「奴隷舞踊」から「正体のしれない人」へ 」

 

とりあえず

庄司宏子「国民国家と文学 」

鵜戸聡「「アルジェリア人」とは誰か?」

を読みました。

庄司先生のまとめがわかりやすかったですし、鵜戸さんのアルジェリアの言語状況を架デブ・ヤシンのケースを例に説明しているのも勉強になりました。

 

鵜戸さん、どうもありがとうございました。

 

 

アンソロジーのなかのナボコフ⑬ The Modern Image: Outstanding Stories from the Hudson Review, New York : Norton, 1965.

ひさしぶりになった「アンソロジーのなかのナボコフ」ですが、
今回はThe Modern Image: Outstanding Stories from the Hudson Review(1965)をご紹介します。
 

Frederick Morgan ed., The Modern Image: Outstanding Stories from the Hudson Review. introduction by Robert M. Adams. New York : Norton, 1965.

 

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The NRACP / George P. Elliott
What happened to Sargeant Masuro? / Harry Mulisch
To the wilderness I wonder / Frank Butler
The tunnel / Valdemar Karklins
Sound of a drunken drummer / H.W. Blattner
One Sunday morning at the Russian bath / Herbert Gold
The farmers' daughters / William Carlos Williams
In a cold hotel / Ben Maddow
The vane sisters / Vladimir Nabokov
This indolence of mine / Italo Svevo

 

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Robert M. AdamsによるIntroductionによれば

In fact, if there is a Hudson Review tone (as distince from a program), it is probably a tone of firm, undogmatic critical lucidity. So far as I'm aware, the magazine has had, within its chosen area of operations, no tabu subjects, no sacred cows, no biased toward the rational. pp. 7-8

 

収録作家は以下のような面子です。

 

ジョージ・P・エリオット(1918-1980)

ハリー・ムリシュ(1927-2010)オランダ

フランク・バトラー ??

Valdemar Karklins  (1906-1964)ラトヴィア

H・W・ブラットナー(1916-1977)女性

ハーバート・ゴールド(1924-)

ウィリアム・カーロス・ウィリアムズ(1883-1963)

ベン・マドー(1909-1992)

ウラジミール・ナボコフ(1899-1977)

イタロ・ズヴェーボ(1861-1928)イタリア

 

かなり外国人・外国語がはいっているのがポイントでしょうか。

 

編者のフレデリックモーガンは『ハドソン・レヴュー』の創設者のひとり(1922-2004)。

ロバート・M・アダムズ(1915-1966)はコーネル大学教授のようです。

藤野功一編著『アメリカン・モダニズムと大衆文学』金星堂

千代田夏夫先生から共著書、 藤野功一編著『アメリカン・モダニズムと大衆文学』(金星堂)をご恵投賜りました。誠にありがとうございます。

 

藤野功一 序――アメリカン・モダニズムと大衆文学のつながり   1−26

早瀬博範 ガートルード・スタインとセレブリティ・モダニズム 27−59

高橋美知子  ゼルダフィッツジェラルドの決定不可能なテクスト 60−84

千代田夏夫  F・スコット・フィッツジェラルド第一次世界大戦 85−107

中村嘉雄 優生学ヘミングウェイ 108−143

藤野功一 メディアへの愛  144−172

樋渡真理子 フォークナー再売り出し  173−203

塚田幸光 「大衆」とフォト・テクスト 204−226

永尾悟 人種を語る自伝的言語の構築 227−250

山下昇 ラルフ・エリスンモダニズムと大衆文学・文化 251−275

 

主に九州のアメリカ文学者が寄稿した論文集です。

 

千代田先生は「F・スコット・フィッツジェラルド第一次世界大戦」という論文を寄稿されています。

 

あとは藤野功一先生「メディアへの愛」、樋渡真理子先生「フォークナー再売り出し」、早瀬博範先生「ガートルード・スタインとセレブリティ・モダニズム」も自分の関心からとても勉強になりました。

 

 

 

2019年度 ナボコフ協会大会のおしらせ

2019年度の大会は5月11日(土)、早稲田大学文学学術院(戸山キャンパス)33号館3階第1会議室にて行われます。

 

今回は報告と、20周年の記念シンポジウムです。

 

私は残念ながら参加できませんが・・・・・・

 

くわしくは以下をご覧ください。

 

vnjapan.org

日本人はナボコフをどう読んできたか――『ロリータ』を中心に

拙論が掲載されました。

 

「日本人はナボコフをどう読んできたか――『ロリータ』を中心に」『言語文化』36号、2019年、3-22頁。

 

拙著『アメリカのナボコフ――塗りかえられた自画像』(慶應義塾大学出版会)の第五章で論じたナボコフの日本での受容を、もう一度出版や翻訳研究の立場からとらえなおそうとした内容になります。

 

本原稿に関しては、明治学院大学の貞廣真紀先生に大変お世話になりました。ありがとうございました。

 

なお、本論は特集「トランスレーション・アダプテーション・インターテクスチュアリティ」の一編として掲載されています。

400頁を超す大変に読みでのある号ですので、よろしければお読みください。

(いずれ電子化もされるということです)

 

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www.meijigakuin.ac.jp

小澤裕之『理知のむこう ダニイル・ハルムスの手法と詩学』 未知谷

 小澤裕之さんにご著書『理知のむこう ダニイル・ハルムスの手法と詩学』 をいただきました。どうもありがとうございました。

 

ハルムスの活動を意味をこえた「ザーウミ」として同時代の文学運動のなかでとらえなおすもので、勉強になりました。

 

ぱっとみではわかりづらいですが、造本が非常に凝った本です。

クリーム色のクロス装で、スピン(紐のしおり)が二色、二本ついています。

 

本書はそれだけで立派なモノグラフですので、

他人の「跋」は私だったらつけないかな、と思って読みました。

 

(145頁 アルカイムズ→アルカイズム?)

 

 

 

www.kinokuniya.co.jp