訳すのは「私」ブログ

書いたもの、訳したもの、いただいたものなど(ときどき記事)

2023年回顧

今年刊行した出版物は

ホイト・ロング『数の値打ちーーグローバル情報化時代に日本文学を読む』今井亮一・坪野圭介共訳、フィルムアート社

 

デジタル・ヒューマニティーズをはじめて本格的に日本近代文学に適用した研究の紹介です。

日経新聞』『産経新聞』ほか、各誌で書評にとりあげられました。

 

ホイト・ロング先生については『日本近代文学』に「物語の科学――過去・現在・未来」『日本近代文学』(第109集、2023年、182-188頁)も翻訳しました。

 

chatGPTが話題になりましたが、文学研究にもデジタル化の波が押し寄せています。

 

アレクサンダル・ヘモン『ブルーノの問題』柴田元幸共訳、書肆侃侃房

2021年『私の人生の本』につづいて、ヘモンの短編集を翻訳刊行できました。

共訳者は師匠でもあり、ヘモンの初期の紹介者でもある柴田元幸先生です。

 

9月にはトワイライライトさんで柴田先生とトークインベントをおこないました

(お越しくださったみなさまありがとうございました)。

 

 

 

3「独裁者は世界文学の夢を見るか――エヴゲーニー・チジョフ『下訳からの翻訳』とポストソヴィエト的翻訳ポリティクス」『言語文化研究』34巻2号、2022年12月、129-138頁。

 

以前シンポジウムで話した内容の論文化です。一応一本論文を刊行できました。

 

4ジゼル・サピロ「文学作品はいかに国境を越えるのか(あるいは越えないのか)?--世界文学への社会学的アプローチ」MITIS Journal Vol.3 No.2 (2023), 31-46.

こちらはすべりこみで今年出た翻訳です。水野通訳翻訳研究所の水野的先生にお世話になりました。

 

ほかにわずかですが寄稿した『文庫で読む100年の文学』(中公文庫)が刊行になったり、新聞に寄稿させていただいたりといったところでしょうか。

あとはポー学会に呼んでいただいたりといったところが記憶に残っております。

 

2024年の展望は元日に公開したいと思います。

『ブルーノの問題』書評

アレクサンダル・ヘモン『ブルーノの問題』の書評を書いてくださったかたがた、どうもありがとうございます。

 

牧眞司

 

「語りの技巧を隠し味に、虚実が入り交じるスパイ物語」『SFマガジン』2024年2月号、158頁。

「少しシュールで乾いたユーモアの作品だ。意識の流れやヌーヴォーロマン的な表現がさりげなく用いられている。」

 

永江朗さん 「戦時下の人々描く八つの短編」『毎日新聞』2024年1月27日号

衝撃的なのが「コイン」。<地点Aと地点Bがあり、地点Aから地点Bへ行くには腕利き狙撃兵から丸見え開かれた空間を通らねばならないとします。>という文章で始まる。

 

巽孝之先生 『産経新聞』2024年1月28日

この故郷喪失作家にとって、マクロな世界史的瞬間は自らのミクロな家族史的瞬間に等しい。[略]それにしても、ブルーノとは何者か。本書表題を1章として含む「ブラインド・ヨゼフ・プロネク&死せる魂たち」を熟読しても正体不明。作家自身がその歴史観に共鳴するポーランドユダヤ系作家ブルーノ・シュルツか、それともルネサンス時代のイタリアに生を受けながら、そのあまりの先見性ゆえに故郷喪失者となり異端審問にかけられ、それこそスパイとすら疑われたジョルダノ・ブルーノか。ヘモンが何層にも隠し持つ思考の裾野は、間違いなく21世紀アメリカ文学を牽引(けんいん)する。

 

www.sankei.com

三角明子先生 『図書新聞』No.3626 ・ 2024年02月03日

 

ヘモンは、一冊一冊の本とは、作者と読者が言語を介して形成する〈かりそめの共同体〉だと言ったことがあるが(『早稲田文学』二〇一四年冬号)、小説とは、なんと自由でありうるものなのか。

note.com

 

ジゼル・サピロ「文学作品はいかに国境を越えるのか(あるいは越えないのか)?--世界文学への社会学的アプローチ」MITIS Journal Vol.3 No.2 (2023), 31-46.

水野翻訳通訳研究所のジャーナルMITISに論文を訳しました。

 

ジゼル・サピロ「文学作品はいかに国境を越えるのか(あるいは越えないのか)?--世界文学への社会学的アプローチ」MITIS Journal Vol.3 No.2 (2023), 31-46.


以下のサイトから無料でDLできます。

mitis.webnode.jp 

jaits.web.fc2.com/MJ7.pdf

 

↑PDFが開きます。

 

以下の論文の翻訳です。

Gisèle Sapiro, “How Do Literary Works Cross Borders (or Not)?: A Sociological Approach to World Literature,” Journal of World Literature 1 (2016) 81–96

 

ジゼル・サピロ先生は文学社会学の第一人者ですが、

近年は翻訳社会学についても研究を発表しています。

翻訳社会学は近年注目を集めている分野ですが、日本ではほとんど紹介されていません。

著者の許可を得て、その代表的な論文を邦訳しました。

 

ジゼル・サピロ先生には以下の翻訳があります。

 

 

 

 

「国際的環境におけるオーサーシップの構築」黒木秀房訳 『立教大学フランス文学』 47 (2018) 

file:///C:/Users/admin/Downloads/AN00249094_47_03.pdf

高田怜央『SAPERE ROMANTIKA』(paper company)『KYOTO REMAINS』(写真・遠藤祐輔、paper company)

詩人・翻訳家の高田怜央さんがご著書をご恵投くださいました。どうもありがとうございます。

 

第一詩集の『SAPERE ROMANTIKA』

 

honnosiori.buyshop.jp

こちらは日本語の詩とその訳である英語の詩が掲載されている構成で自己翻訳になっています。

 

写真家遠藤祐輔さんとの「対話篇」である『KYOTO REMAINS』です。

 

twililight.stores.jp

高田さん、どうもありがとうございました。

ホイト・ロング「物語の科学――過去・現在・未来」『日本近代文学』第109集、2023年、182-188頁。

日本近代文学会の学会誌『日本近代文学』にホイト・ロング先生の文章を訳しました。

 

ホイト・ロング「物語の科学――過去・現在・未来」『日本近代文学』第109集、2023年、182-188頁。

 

「展望」のコーナーで、ご自身の研究について、

単著『数の値打ち』以降の最新の研究についても語られています。

 

 

ぜひお手に取ってご覧ください。

 

 

佐峰存『雲の名前』思潮社

詩人の佐峰存さんから詩集『雲の名前』(思潮社)をいただきました。どうもありがとうございます。

 

佐峰さんのお名前は『て、わたし』という雑誌に掲載されていたイリヤカミンスキーの詩の翻訳で知りました(その後、『現代詩手帖』のアメリカ詩特集も読みました。)

 

blog.goo.ne.jp

 

佐峰さんの第二詩集、拝読したいと思います。

 

 

川本直・樫原辰郎・武田将明編『吉田健一に就て』国書刊行会

編者の武田将明先生からご編書をご恵投賜りました。どうもありがとうございます。

 

 川本直・樫原辰郎・武田将明編『吉田健一に就て』国書刊行会

 

www.kokusho.co.jp

作家の吉田健一についての、(執筆陣ふくめ)豪華な本です。

武田先生は「〈芸術家としての批評家〉の誕生——『英国の文学』と『英国の近代文学』を読む」と「あとがき」を担当されています。

武田先生、どうもありがとうございました。拝読させていただきます。

(私の中の吉田健一はウォーの『ブライズヘッドふたたび』の訳者のイメージです。)