訳すのは「私」ブログ

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『アバイ』(イブラギム クナンバエフ詩集 叙事詩 訓戒の書)花伝社、2020年。

クルマンセイト・バトルハン氏より『アバイ』をご恵投賜りました。どうもありがとうございます。

 

『アバイ』(イブラギム クナンバエフ詩集 叙事詩 訓戒の書)花伝社、2020年。

 

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カザフの国民詩人、アバイ・クナンバエフの詩集です。

ja.wikipedia.org

日本語での初の本格的な紹介ではないでしょうか。

 

国会図書館にもいまのところ所蔵がない?ようですので、内容をくわしく紹介しておきます。

 

 非売品ですが、3000部刷られた旨奥付に記載されています。

 

内容は、トカエフ大統領による序文、そしてアバイによる詩ですが、

詩は「詩集」「訓戒の書」の二つに分かれています。

それぞれの訳者は以下の通り。

詩集

翻訳:

アリプバエヴァ・ジュルドウズ(1-25)

 

ボランクロヴァ・サマル(26-58)

シャダエヴァ・マデイナ(59-114)

 

カリベック・ジャナル(115-149)

 

監修・翻訳:西村幹也

翻訳協力:リヤス・クグルシン

 

訓戒の書

翻訳:

アンダソヴァ・マラル(1-15)

カリベック・ジャナル(16-19,26-37,39, 44-5)

アリプバエヴァ•ジュルドウズ(38)

 

ヌルトレウ・ジャナル(20-25, 40-43)

 

監修・翻訳:坂井弘紀、増島繁延

 

 

 

目次

 

力スムージョマルト・トカエフ アバイの遺産は人類の宝……3

 

詩集

 

1855 -1881

 

東洋の詩人のように……19

アルフアベットの歌……20

おちつけ、おちつけ、我が心……22

 

1882 -1883

 

初雪の鷹狩りに……27

 

1884

 

美しく叩き延ばした真っ白い銀のような広い額……33

 

1885

 

若い頃、科学をよく理解していなかった……37

 

1886

 

歳をとり、力衰え、増える願い……41

年老いて、悲しみに暮れ、眠りは浅く……44

狩人たるイヌワシが逃すモノがあるだろうか?  訓練されて、放たれて……47

大衆よ、カザフ人よ、哀れな人々よ……48

金持ちたちは集めた財産を守らせて……50

友にも、敵にも、失望した……51

道に迷った者はひたすら前へ、その後に道ができる……54

たとえ短くとも青春……55

若者たちよ、おふざけは安く、ほほえみは高い……58

王たる神に、祈り捧げる……63

市場を見ていると、誰もが行くところらしい……64

寄宿合で学んでいる……65

科学を身につけることなく奢るな……69

大きな太くて豊かな(まるで棍棒のような)前髪と、アシのような耳を持つ……73

夏……75

後悔だらけの人生は過ぎ去った……78

 

1887

 

忍耐もなく、恥も知らぬ、怠け者……83

他所の土地にいたならば……87

詩は言葉の王、言葉の粋……94

 

1888

 

嘆き悲しむ……親しい者が亡くなって……101

秋……104

11月、12月の2ヶ月……106

冬……108

風無き夜の明るい月……110

 

1889

 

魂は死んだが、見た目は元気だ……113

これでやつとボルスになった……115

誰かが誰かより優れているのなら……122

ボルスは喜ぶ……124

教養のある言葉が……127

8節のスタンザの詩……129

あなたの魂が光に照らされているなら……138

詩を書くのは、気晴らしのためではない……140

知恵の源は冷たい氷のようだと知る……142

愛情と、情熱は別物……143

私の屈辱的な魂……144

私をどうしようというの?……146

彼の願い……150

彼女の返事……152

腰にいたる太い三つ編み……155

永遠の友情はない……156

書春の炎はいずこ?……158

闇に落ちた魂は光を放たぬ……160

トグルがいかに最善を尽くそうとも、トルバルを追い越すことは決して無い……161

 

1890

 

バイが少ない……165

薬が見つからない……168

いい歳になった……170

すべてに退屈できたとしても……173

時に、頑固な魂は……175

春、真っ只中……176

式や祝いに出て……180

親の目を喜ばせる……182

タイに乗って……184

 

1891

 

世紀末の若者たち……189

見えるモノにしか考え及ばず……190

若い炎が燃えさかり……192

赤くなっだり、青くなったり……195

君は私の瞳……197

無学者を卑しめてきた……202

なぞなぞ……204

なぞなぞ…… 205

 

1892

 

心よ、何を求めているのだ?……209

心臓よ、もう動くな……211

悲しみは学識から……212

オスパンへ……215

 

1893

 

熱くさせたり、冷ましたり……229

お調子者……220

善きは長生きせぬものか……223

 

1894

 

警いの後に別れ……227

11月に人生が留まったまま……229

今の若者たちにはあきれるばかり……231

 

愛の言葉は沈黙......232

あれこれすぐに誘惑されるな……233

かつての姿……235

アブドラハマンが臥せったとき……237

アブドラハマンへ……241

カキタイからアブドラハマンへ 代筆......... 243

 

1895

 

いろいろ私は言い続けてきた……247

脂を食べねぱ空腹は満たされぬのか?……246

少年時代は死んでしまった、気づいているか?……250

羊が川を渡っても、泥水に脂は着かぬ........ 251

自然は死ぬが、人は死なぬ……253

アブドラハマンが召されたとき……254

生前のオスパンおじさん……256

生前のアビシュ……257

アブドラハマンが亡くなったとき……252

アブドラハマンの死に……259

アプドラハマンの死に……262

アブドラハマンへ……263

アブドラハマンが亡くなったとき、自らに向けた慰めの言葉……265

アブドラハマンの妻マギッシュに言った慰めの言葉……268

アブドラハマンの妻マギッシュに送ったジョクタウ……271

従兄弟が亡くなったときに言ったこと……277

愛情、友情を育てる……279

 

1896

 

家畜を友とする人の悩みは家畜だけ……283

生んでくれた両親はおらず……284

ある美女はハーンのもとで……285

時計の音は楽しみではない……288

世界は夢で溢れている……289

人生のひととき……292

雨雲が裂けて……293

 

1897

 

これからの時代は青い春のよう……297

褒められたからと人を信じるな……299

アッラーと言うは簡単……300

ただの叫び声……301

便りを送る……302

惨めに運命に翻弄される……303

耳から入り、心に染みる……304

あの忘れられぬ楽しき日々よ、いずこに……306

 

1898

 

民衆は派閥を作り……309

威勢良く燃え立つ炎のように……311

邪悪な世界に奪われている、何ができる? ...... 312

死んで入る墓は冷たいだろうか?……373

心に志なくば……315

ジャマンバラの息子の死に……326

日々は続く……317

痛んだ心は、力なく鼓動する……318

ロバ……319

 

1899

 

若い頃を覚えているか?……323

心破れて……324

人間なんて糞袋……325

子犬を育てて犬にしたら……326

楽しめず、愛せず……327

君は青空を仰ぎ、育った……328

 

1900

 

心よ、何を感じているのだ?……331

影が伸びて……333

 

1901

 

若さに自惚れるな……337

恥ずかしいと言うのは口だけ……338

枯れ葉のような希望を持ち……339

クムズはカザフ人に……340

君の雄弁なる舌……342

 

1902

 

美しい華やかな蝶……346

アッラーの存在も、その言葉も真理なり……346

心は海、喜びは海の宝……349

 

1903

 

火炎から生じた……353

 

執筆時期不明の詩

 

ドンブラを鳴らすな……357

思い耽った、熟慮した……359

我を張るな……362

無知は無知、たとえ物知りでも……352

稲作以上の労働はない……363

見極め、理解し、旅をする……364

 

叙事詩

 

エスケンデル……367

マスグット……375

アジムの物語……384

 

訓戒の書

 

第一の言葉……407

第二の言葉……410

第三の言葉……413

第四の言葉……417

第五の言葉……419

第六の言葉……421

第七の言葉……423

第八の言葉……426

第九の言葉……428

第十の言葉……430

第十一の言葉……434

第十二の言葉……436

第十三の言葉……437

第十四の言葉……439

第十五の言葉……441

第十六の言葉……443

第十七の言葉……444

第十八の一言葉……447

第十九の言葉……448

第二十の言葉……449

第二十一の言葉……450

第二十二の言葉……452

第二十三の言葉……454

第二十四の言葉……456

第二十五の言葉……457

第二十六の言葉……467

第二十七の言葉……463

第二十八の言葉……468

第二十九の言葉……470

第三十の言葉……472

第三十一の言葉……474

第三十二の言葉……475

第三ト三の言葉……478

第三十四の言葉……480

第三十五の言葉……483

第三十六の言葉……485

第三十七の言葉……488

第三十八の言葉……492

第三十九の言葉……514

第四十の言葉……516

第四十一の言葉……519

第四十二の言葉……521

第四十三の言葉……523

第四十四の言葉……528

第四十五の言葉……530

 

 

 

赤い十字 サーシャ・フィリペンコ著 歴史忘れ繰り返す同じ過ち

サーシャ・フィリペンコ『赤い十字』(奈倉有里訳、集英社)の書評を執筆しました。

「歴史忘れ繰り返す同じ過ち」『日経新聞』2022年2月12日。

 

www.nikkei.com

 

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イベント告知(3月13日学習塾「とらきつね」)

矢倉喬士さんにお招きいただき、以下のイベントに出させてもらえることになりました。

 

イサーク・バーベリ『騎兵隊』中村唯史訳、松籟社

訳者の中村先生よりご恵投賜りました。どうもありがとうございます。

 

イサーク・バーベリ『騎兵隊』中村唯史訳、松籟社

 

ユダヤ系作家、イサーク・バーベリの代表作の待望の新訳ですね。

 

第一次大戦後のソヴィエト-ポーランド戦争。オデッサ出身のユダヤ系作家イサーク・バーベリは自らの文学の題材を見出すために、この戦争に従軍するが……。
戦争の過酷な現実を描写する散文と、生の豊穣な本質を顕現させる詩との境界線上で、危うい均衡を保ちながら奇跡的に成立したバーベリの傑作が、新訳で蘇る。

 

今回、訳文が一新されたのはもちろんですが、訳者解説が非常に充実した一冊になっています。

 

www.hanmoto.com

 

 

 

なお、一部の作品を以下のアンソロジーに先行収録させてもらいました。

 

 

 

バーベリ×中村訳だとこちらも。

 

 

私も過去に一編訳しました。

yakusunohawatashi.hatenablog.com

レベッカ・L・ウォルコウィッツ『生まれつき翻訳――世界文学時代の現代小説』佐藤元状・吉田恭子監訳、田尻芳樹・秦邦生訳(松籟社)

レベッカ・L・ウォルコウィッツ『生まれつき翻訳――世界文学時代の現代小説』佐藤元状・吉田恭子監訳、田尻芳樹・秦邦生訳(松籟社

 

訳者の佐藤先生にご恵投賜りました。どうもありがとうございます。新しい世界文学研究の研究書が日本語でも刊行されたこと、大変うれしく思っております(巻末の鼎談でも私の訳書や著書をとりあげてくださり、ありがたかったです)。

 

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文学の翻訳と流通の規模が前代未聞なまでに拡大した今日、多くの小説は当初から翻訳を見越して書かれ、また、翻訳をその内部にあらかじめ組み入れている。
クッツェー、イシグロ、村上春樹、キャリル・フィリップス、デイヴィッド・ミッチェルといった作家たちの「生まれつき翻訳(ボーン・トランスレーテッド)」の作品は文学の生産・流通・受容をとりまくシステムをいかに利用し、取り込み、そして改変していくのか。
翻訳という営みから考究する、画期的な世界文学論。
ラヒリ、多和田葉子、イシグロを論じた日本語版特別寄稿「知らずに書く」を収録。

 

目次

序章 世界文学の今をめぐって
第一章 距離を置いた精読
第二章 シリーズ、リスト、そしてクローン
第三章 抽出、照合、計算
第四章 これはあなたの言語ではない
第五章 ボーン・トランスレーテッド&ボーン・デジタル
エピローグ マルティプルズ
日本語版特別寄稿 知らずに書く

 

 

www.hanmoto.com

 

 

 

西成彦『声の文学――出来事から人間の言葉へ』(新曜社)

著者よりご恵投賜りました。どうもありがとうございます。

 

西成彦『声の文学――出来事から人間の言葉へ』(新曜社

 

小説の中で囁かれる声、あるいは「研究」のために収集されなくてはならなかった声。その多くは「非主流者」達の「個」としての複数の抵抗の声であり、歴史のうねりの大きさを象徴する。「声」が力強い言葉へと文脈化される道程を追う画期的な書。戦時性暴力、ジェノサイド、ミソジニー。あらゆる暴力下に生きた人々の「声」を我々の現在の「生」へと結びつける。 

 

www.shin-yo-sha.co.jp

 

2022年展望

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

昨年のふりかえりは昨日のエントリを見てください。

 

 2022年の刊行予定をアップしておきます。

 

・(翻訳)ウラジーミル・ナボコフ『ヴェーラへの手紙』(白水社)年内

 

ナボコフが妻ヴェーラにあてた五十年分の、三百通以上の手紙。完訳になります。

手元の訳稿1400枚超。今年こそは出ると思います。

 

・(共訳)ローレンス・ヴェヌティ『翻訳のスキャンダル(仮)』(フィルムアート社)

 

翻訳研究の第一人者ヴェヌティの待望の邦訳です。もはや古典です。

 

・(共編・共訳)『???』(作品社)年末~来年

これも昨年からの持ち越し。ナボコフ関連とだけ。オリジナル編集の、かなり変わった本・アンソロジーになりそうです。

 

2022年は、このあたりが出ていくはずです。よろしくお願いいたします。