訳すのは「私」ブログ

書いたもの、訳したもの、いただいたものなど(ときどき記事)

2011-01-01から1年間の記事一覧

西脇順三郎の自己翻訳(2)

西脇順三郎についてちょっとだけ調べてみると、いくつかその自己翻訳についてわかったことがあったのでメモ。 1、西脇はイギリスでの留学生活を終えて帰国する際に、フランス語の詩集を出せないか、とパリに立ち寄り、フランス語詩の原稿を持って出版社巡り…

魯迅の自己翻訳

藤井省三『魯迅−−東アジアを生きる文学』(岩波新書)をなんとはなしに読んでいたところ、魯迅も自己翻訳をしていたことを教えられました。 北京の邦字週刊誌『北京週報』(1923年1月の新年特別号に「魯迅作同人訳」として)に魯迅自身による自作の童話「兎と…

「訳すのは『私』」症候群

新潮 2011年 06月号 [雑誌]出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/05/07メディア: 雑誌 クリック: 4回この商品を含むブログ (4件) を見る今日発売の『新潮』6月号の「新潮」のコーナーで 「「訳すのは『私』」症候群」という小文を書きました。自己翻訳につい…

デイヴィッド・ダムロッシュ『世界文学とは何か?』目次

ちなみに表紙は『ドリトル先生』にでてくる「オシツオサレツ」をモチーフに作ってもらったもので、日本語版オリジナルです。世界文学とは何か?作者: デイヴィッド・ダムロッシュ,秋草俊一郎,奥彩子,桐山大介,小松真帆,平塚隼介,山辺弦出版社/メーカー: 国書…

訳したのが私(たち)な本

世界文学とは何か?作者: デイヴィッド・ダムロッシュ,秋草俊一郎,奥彩子,桐山大介,小松真帆,平塚隼介,山辺弦出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2011/04/27メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 48回この商品を含むブログ (23件) を見る共訳したデイヴィッ…

西脇順三郎の自己翻訳(1)

西脇順三郎(1894〜1982)が英語などの外国語から詩作に入り、 ジョイスなどの詩を多く翻訳したモダニズム詩人であったことはよく知られています。他方で、彼が一部の自作詩を自分で訳したことがある「自己翻訳」の詩人だったことは あまり知られていません…

村上春樹の「自己重訳」

「象の消滅」 短篇選集 1980-1991作者: 村上春樹出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2005/03/31メディア: 単行本購入: 11人 クリック: 231回この商品を含むブログ (251件) を見る村上春樹はどう誤訳されているか―村上春樹を英語で読む (MURAKAMI Haruki TUDY BO…

『本郷の春』

文集『本郷の春−−ウラジーミル・ナボコフと亡命ロシア作家たちをめぐる連続講義の記録』をいただきました。昨年、京都で行われた国際ナボコフ学会にあわせて来日したロシア系ナボコフ学者たちの講演を集めたものです。 講演の案内自体はこちら。 http://www.…

『ローラのオリジナル』

ローラのオリジナル作者: ウラジーミル・ナボコフ,中田晶子,若島正出版社/メーカー: 作品社発売日: 2011/03/22メディア: 単行本 クリック: 7回この商品を含むブログ (5件) を見るウラジーミル・ナボコフ『ローラのオリジナル』(若島正訳、作品社)をご恵贈…

移民作家の自己翻訳

Moment of Silence作者: Toma Longinovic出版社/メーカー: Burning Books発売日: 1990/03/01メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (1件) を見る今、移民作家が自作を受け入れ先の国の言葉で出版することは(特にアメリカなどでは)珍しくなくなって…

ナンシー・ヒューストンの場合

このブログ、ネタはかなりあるんですよね。書けるかどうかはともかく。今日はナンシー・ヒューストンの場合。ナンシー・ヒューストンはカナダの英仏バイリンガル作家。あのツヴェタン・トドロフの奥さんでもあるようです。英語が母語ですが、仏語で創作をは…

ジョイスが訳すジョイス

花粉がひどいですね。いつも鼻炎気味なのでよけい……。『訳すのは「私」』ではとりあげなかったのですが、自己翻訳をした作家の中でももっとも大物のひとりがジェイムズ・ジョイスです。彼は自分の実験作『フィネガンズ・ウェイク』の一部、「アナ・リヴィア…

エクソフォニーとオムニフォン

このブログではネタを備忘録的に放り出しておくだけで、特に掘り下げることはしないんですよ(言い訳)。今日読んだ管啓次觔の『本は読めないものだから心配するな』(左右社、91頁)によれば、 「エクソフォニー」とは外の言語で書くという実践、「オムニフ…

『訳すのは「私」』関連論文

土曜日はあやうく新宿の路上の露と散るところでした。。。 『ナボコフ 訳すのは「私」−−自己翻訳がひらくテクスト』が出たのはいいのですが、内容説明だけではいまいちわからない、ということがあると思います。 そこで試し読みではないですが、著者の関連論…

『ナボコフ 訳すのは「私」――自己翻訳がひらくテクスト』(詳細目次)

ナボコフ 訳すのは「私」―自己翻訳がひらくテクスト作者: 秋草俊一郎出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2011/02/28メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 53回この商品を含むブログ (9件) を見る詳細な目次(章だけでなく節もふくめた)は以下のように…

多和田葉子の場合(1)

もう三月になってしまいました。二月は短い……。前々回のエントリでは共訳者について触れましたが、 作者=訳者が自己翻訳研究の一番のソースであることはまちがいありません。 自己翻訳研究はどうしても作者=訳者という存在に束縛される面があります (この…

オリジナルとはなにか――カフカの場合

まだはてなの書法になれていません(あとで見やすく直します、できれば)。さて、「自己翻訳」は作品の<オリジナル>とはなにか、という問題にかかわりますが、 これは伝統的に草稿研究がかかわってきた問題でもあります。たとえば、カフカの作品の多くは生…

レヴィンの翻訳論

The Subversive Scribe: Translating Latin American Fiction (Dalkey Archive Scholarly)作者: Suzanne Jill Levine出版社/メーカー: Dalkey Archive Pr発売日: 2009/10/06メディア: ペーパーバック クリック: 2回この商品を含むブログ (1件) を見る「作者…

サミュエル・ベケットの自己翻訳研究

日本語で読める自己翻訳研究を(『訳すのは「私」』でとりあげたもの以外で)いくつか紹介しておきます(自分のメモ替わりもかねて)。 英語・フランス語というメジャー言語ふたつで執筆したこともあり、やはりベケット関連の論文・文章が多いです。 たとえ…

『訳すのは「私」』ブログ

このブログでは『ナボコフ 訳すのは「私」――自己翻訳がひらくテクスト』について、出版情報の紹介や正誤表の公開などをおこないたいと思っています。ナボコフや自己翻訳について考えたり、『訳すのは「私」』に入れられなかった情報や、反応への応答(万が一…