井波律子氏による『ナボコフ全短篇』の書評が10月2日の毎日新聞に掲載されていました。
「夢と断絶の迷路にいざなう万華鏡」というタイトルで、いくつかの短篇については、かなりたちいって筋を紹介されています。ありがとうございます。
しかし、一節の「著名な蝶のコレクター」という表現、たまにナボコフを形容する表現として使われているのを目にしますが、いつも違和感を感じます。もちろん間違いではないんでしょうが、なんというか、中国文学研究者を「中国の本のコレクター」というぐらいのピンぼけ感、というか。
ナボコフの蝶への関心は単純な「コレクター」の域を超えたもので、何本もの学術論文を残すなど、専門的なものでした。ナボコフ自身、そういったコレクター的アマチュアリズムによる蝶を使った文学への味付けを批判していますしね。
そのあたりについては最近翻訳もでたスティーブン・グールド『ぼくは上陸している』を読まれるといいでしょう(二章「想像力なき科学も、事実なき芸術もありえない」)。
ぼくは上陸している (上): 進化をめぐる旅の始まりの終わり
- 作者: スティーヴン・ジェイ・グールド,渡辺政隆
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2011/08/10
- メディア: 単行本
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