訳すのは「私」ブログ

書いたもの、訳したもの、いただいたものなど(ときどき記事)

『翻訳地帯――新しい人文学の批評パラダイムにむけて』「イントロダクション」公開

エミリー・アプター『翻訳地帯――新しい人文学の批評パラダイムにむけて』の「イントロダクション」を特設サイト内で公開しました。

 

9.11の悲劇の余波をうけて、政治的な観点からも、腕利きの訳者がすぐにでも要ることがだれの目にも明らかになり、国家の安全を保障する機関は、傍受した情報や文書を解読する語学に長けた専門家を確保しようと躍起になった。翻訳とグローバル外交の関係が、かくも密になったことはなかったように見える。アメリカの単一言語主義モノリンガリズムは情報共有、文化・宗教の枠をこえた相互理解、多国籍協同の必要性が再認識されたこともあって批判を集め、翻訳は大きな政治的、文化的意義をもつイシューとして最前線におどりでたのだった。もはや、翻訳を国際関係、ビジネス、教育、文化のたんなる道具と見なすことはできない。翻訳は戦争と平和の重要事として、特筆されるようになったのだ。

 

www.keio-up.co.jp

 ちなみに、原書の刊行元のプリンストン大学のサイトでは第一章を読むことができます。

press.princeton.edu

 

 

 

『翻訳地帯――新しい人文学の批評パラダイムにむけて』ブックフェア開催のおしらせ

 

先月刊行した『翻訳地帯――新しい人文学の批評パラダイムにむけて』ですが、

現在『翻訳地帯――新しい人文学の批評パラダイムにむけて』刊行記念フェア

「世界はどこまで「翻訳」できるのか?」が、

三省堂書店神保町本店2階 文芸書フロアで開催中です。

 

yakusunohawatashi.hatenablog.com

特設サイトはこちら。

 

www.keio-up.co.jp

 

ブックリストはこちら

 

お近くにお越しの際はよろしくお願いいたします。

 

 

 

Nabokov' Hidden Connection with Japanese Literature: Or, What is Literary "Butterfly Effect"?

2013年3月3-4日に開催された国際研究集会「グローバル化時代の世界文学と日本文学——新たなカノンを求めて」の プロシーディングスが刊行されました。

 

Shun'ichiro AKIKUSA, "Nabokov' Hidden Connection with Japanese Literature: Or, What is Literary "Butterfly Effect"?" World Literature and Japanese Literature in the Era of Globalization: In Search of a New Canon -- Does it Make Sense to Discuss World Literature in Tokyo? ed. Mitsuyoshi Numano, The Department of Contemporary Literary Studies, The University of Tokyo, 2018. pp. 33-39.

 

この私の文章自体は、昨年刊行されたナボコフとハーンの抄録みたいな感じであまり意味はないですが。

 

yakusunohawatashi.hatenablog.com

ただほかの寄稿者はすごいメンバーです。

 

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マルク・リポヴェツキー、チャールズ井上、カレン・ソンバーなど、

豪華メンバーですね。

 

元になった会議自体の、当時、助教だった加藤有子先生のレポートがこちら。

 表象文化論学会ニューズレター〈REPRE〉:トピックス (3)

 

これ以上の規模の世界文学をテーマにした集会は東京では無理だろうな、と思っていたところ、今年IWLも開催されるようですね。主催者のバイタリティーには敬服です。

『アメリカのナボコフ――塗りかえられた自画像』正誤表

※この日の日記に『アメリカのナボコフ――塗りかえられた自画像』に誤字・誤植など見つかり次第アップしていく予定です。

 

13頁―14頁

すてきな助手が魔法のランタンのところにおります。

スライドを差しこんで、

……

……映写してください。

 

15頁、左から5行目

日と風と…→と風と…

 

17頁

をひもといて→ひもといて

 

18頁、左から8行目

不眠症だ→不眠症

 

24頁、4行目

一九四三年→一九四

 

60頁、左から5行目

tavern famous its→tavern famous for its

 

左から3行目

a sturdy old very like →a sturdy old German very like

 

98頁、4行目

ほかの共通デザイン → ほかと共通デザイン

 

115頁、2行目

検討さられたら → 検討されたら

 

121頁 この中にウィルソン以上のネームバリューがある作家はひとりもいない→この中にウィルソン以上の権威はだれもいない

 

156頁、左から5行目

suis découragéと読まれているのかも → なぜsuis découragéと読まれているのかも

 

157頁、左から3行目

バトヴォから」からの手紙だった→ バトヴォから」の手紙だった

 

168頁 地図内 ロジストヴェノ→ロジストヴェノ

 

203頁、左から7行目

使用された→使用された

 

215頁、2行目

踊っている人々の脚に視線からめとられてしまった――

 →踊っている人々の脚に視線からめとられてしまった――

 

237頁、5行目

六四の→六四

 

251頁、左から6行目

大江は高校生のころ「アナベル・リイ」の訳詩を高校時代に愛読し→大江は高校生のころ「アナベル・リイ」の訳詩を愛読し

 

253頁

 

尊敬していた亡き父親と同じ名前を→亡き祖父と同じ名前を

 

313頁、3-4行目

年鑑には→年鑑を見ると

 

314頁

ストルーヴェの中が→ストルーヴェの仲が

 

 

 

 

 

「作家の写真を読む― 『ロリータ』の著者ナボコフは、いかに世界的作家になったか」

お招きいただきまして、東京外国語大学でお話しさせていただくことになりました(ありがとうございます)。

  

東京外国語大学 研究講義棟104教室

2018年5月15日(火)16:00-17:30

 

1958年、中年男がローティーンの少女に惹かれるという
センセーショナルな内容の小説、『ロリータ』を刊行した
ロシア人ウラジーミル・ナボコフは、一躍時の人になりました。
この突然あらわれたベストセラー作家に、メディアはむらがりましたが、
その視線はかならずしも好意的なものだけとはかぎりませんでした。
50年代終わりから60年代、70年代をつうじて、
『ライフ』や『エスクァイア』、『ヴォーグ』といった雑誌を通じて
流通した作家の写真をスライドでごらんいただきながら、
作家が、いかに写真家やメディアと協同し、
「文豪」や「セレブリティ」といったセルフイメージを
つくっていったのかを検証したいと思います。

 

 

ロシア若手トーク:秋草俊一郎さん(日本大学大学院総合社会情報研究科・准教授;比較文学、翻訳研究) | 2018年度 | EVENTS | 東京外国語大学

 

 ↓の本の内容についてお話しさせていただきます。

ご関心のあるかたはおいでください。

 

 

「中西部のある大学」――佐伯彰一の見た「世界文学」(上)

東京大学出版会のPR誌『UP』5月号に寄稿しました。

 

 「「中西部のある大学」――佐伯彰一の見た「世界文学」(上)」『UP』5月号、33-40頁。

 

二か月連続掲載の一回目になります。

 

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今回のテーマは佐伯彰一の「反世界文学」思想と、北米の「世界文学」教育です。

内容は以前連載していた「21世紀世界文学カノンのゆくえ」の番外編のようなものになっております。

 

yakusunohawatashi.hatenablog.com

 

『UP』は全国大学生協や一部大型書店などで配布されています。

また、東京大学出版会では定期購読も受けつけています。

PR誌「UP」 - 東京大学出版会

 

ご関心のある方はお手に取ってごらんください。

『アメリカのナボコフ――描きかえられた自画像』(慶應義塾大学出版会)詳細目次公開

慶応義塾大学出版会から刊行予定の『アメリカのナボコフ――描きかえられた自画像』の校正が終わり、発売日も5月18日に決まりましたので(amazonだと19日)、節までふくめた詳細な目次をあげておきます。

 

序 章 ナボコフと読者たち 

 

1 ナボコフ、アメリカ上陸/2 新天地でのロシア語活動/3 「ロシア詩の夕べ」/4 『ロリータ』以後/5 ケンブリッジ凱旋/6 各章について/7 亡命者の自画像

 

第一章 亡命の傷――アメリカのロシアで 

 

1 亡命、二言語使用、翻訳/2 亡命文学史上の「V・シーリン」/3 亡命者たちの英語作家ナボコフ評/4 アメリカのなかのロシアで/5 プニンたち/6 ハーヴァード・ヤードの青い芝生/7 「『ロリータ』と題する書物について」は誰のために書かれたか/8 『ドクトル・ジバゴ』の波紋/9 優雅な生活が最高の復讐である/10 賞と名声と/11 自己翻訳の果て/12 「翻訳」という仮面/13 ナボコフは世界文学か?/14 亡命の神話

 

第二章 ナボコフとロフリン――アメリカ・デビューとモダニズム出版社 

 

1 アメリカ作家になる方法/2 ただ愛のために/3 パウンドの「啓示」とニューディレクションズ誕生/4 セバスチャン・ナイト――近代世界の殉教者として/5 ロフリンの歓迎/6 ニューディレクションズの販売戦略のなかで/7 ボーン・モダン――アルヴィン・ラスティグ/8 バニー&ヴォロージャvs「あのJのやつ」/9 文学というビジネス/10 送りつけられた「時限爆弾」/11 「時限爆弾」の爆発/12 書きかえられた『セバスチャン・ナイト』/13 フェンシングの親善試合/14 出版界の変革の波にさらされて/15 消えた風景/16 「ニューディレクションズの作家」から「アメリカの作家」へ

 

第三章 注釈のなかのナボコフ――『エヴゲーニイ・オネーギン』訳注から自伝へ 

 

1 『エヴゲーニイ・オネーギン』翻訳と注釈/2 埋めこまれた記憶/3 自己言及癖のある語り手/4 注釈――第四章十九連四│六行/5 決闘の謎/6 三冊の「回想記/伝記」/7 二度はゆけぬ場所の地図/8 記憶の索引/9 「眼鏡」から「貝のかたちをしたシガレットケース」へ/10 バトヴォの森で/11 『記憶よ、語れ』第三章二節/12 「回想」から「伝記」へ

 

第四章 フィルムのなかのナボコフ――ファインダー越しに見た自画像 

 

1 被写体としてのナボコフ/2 「捕虫網をもった芸術家」/3 「愛妻家ナボコフ」/4 ぼく自身のための広告/5 そしてアイコンへ/6 ナボコフ朝時代/7 「変人」から「セレブ」へ/8 自己移植の時代錯誤/9 鏡の国の囚われ人

 

第五章 日本文学のなかのナボコフ――戦後日本のシャドーキャノン 

 

1 円城塔――蝶に導かれて/2 ナボコフ日本上陸とその周辺/3 丸谷才一――モダニズム私小説批判/4 「樹影譚」――「捏造」された「起源」/5 大江健三郎――晩年の傾倒/6 『美しいアナベル・リイ』――『ロリータ』を書きかえる/7 隠匿された「告白」、「悪霊」憑きのテクスト/8 「マイクロキャノン」としての私小説/9 性と文学――谷崎/川端/ナボコフ/10 ソフト・パワー戦略の掌中のなかで/11 『ロリータ』を超えて

 

第六章 カタログのなかのナボコフ――正典化、死後出版、オークション 

 

1 「欲望」の対象としての『ロリータ』/2 世界一高価な『ロリータ』/3 正典化されるナボコフ/4 売り払われる遺産/5 ドミトリイ・ナボコフ――父の代理人/6 ヴェラの蝶/7 ドミトリイの蝶/8 『ローラのオリジナル』のオリジナル/9 刊行ラッシュ/10 在庫一掃セール/11 息子の死/12 プライヴェートからパブリックへ

 

おわりに 

 

アメリカ到着後の年譜と地図 

引用元クレジット一覧 

図版一覧 

索引 

 

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