久しぶりにNabokov@New York Cityの更新です。
1958年8月、アメリカ版『ロリータ』が パットナム社より刊行されると、ナボコフの周囲はにわかにあわただしくなっていきます。
10月、ナボコフ夫妻は2週間ほどニューヨーク・シティを訪れることになりました。このときの話は、たびたび参照してきたボイドの伝記ではなく、ステイシー・シフの『ヴェラ(ナボコフ夫人)』のほうに詳しく書かれています。
In the course of October the Nabokovs made two weekend trips to New York. On the first occasion Vladimir spoke at The Herald Tribune's Book and Autjor Luncheon at the Waldorf-Astoria, along with his fellow bestsellers Agnes de Mille and Fannie Hurt. Before a thousand people he read his poem "An Evening of Russian Poetry," mentioning Lolita not at all. Véra believed the verse was lost on the audience, which for the most part consisted of elderly women. Stacy Schiff, Véra
ウォルドルフ=アストリアはマンハッタンの中心部にある「アメリカを代表する高級ホテル」です。
そこで『ヘラルド・トリビューン』の主催で、振付師アグネス・デ=ミルと、作家ファニー・ハーストと一緒に朗読会をおこなうことになりました。1958年の時点で、「ベストセラー」作家というくくりで、ナボコフがどういった作家とまとめられていたのかは興味深いです。
共演者二人が女性作家ということもあり、ホールをうめた千人の年配の女性は、ナボコフが読んだ詩「ロシア詩の夕べ」のユーモアを理解しなかったようです。
実はこのときの朗読の様子を以下のニューヨーク公共ラジオのサイトで聴くことができます(ただしこのサイトでは朗読を『ロリータ』刊行直前としていますが、おそらくまちがい)。
たしかにこれを聴くと、観衆が拍手を送っているのがわかりますが、笑い声はまったく起こっていませんね。
つづきます。