ナボコフ研究者の小西昌隆氏に拙著『ナボコフ 訳すのは「私」――自己翻訳がひらくテクスト』の書評を書いていただきました(『ロシア語ロシア文学研究』44号)。ありがとうございます。
今現在、もっとも専門的(ナボコフ批評)な観点から書かれた書評だと思います。
266ページ終わり〜267ページはじめの「ナボコフによるテクストの所有権の正当性を自明視している」とおいところが批判として本質をついているのではないか、と。
あと、267ページ終わりから268ページの本書の『ディフェンス』読解へのメタ読解がおもしろかったです。
いろいろと考えさせられるところですが、また小説についての文章のかたちでどこかに発表したいですね。
(『書きなおすナボコフ、読みなおすナボコフ』に収録してもらった『ロリータ』・カスビーム論もその試みの一つですが、あんまりうまくいっていないのでいつか書きなおしたいところ。)
書評の後半は『書きなおすナボコフ、読みなおすナボコフ』に話題が移っていて、書評と言うよりも現在のナボコフ研究に対する(小西氏の)所感になっており、それはそれで有意義だとは思いますが、『書きなおす〜』は(書かれていませんが)小西氏も共著の本であり、媒体の学会誌という性格および、公正性の観点からは別の評者による客観的な意見が望ましかったのではないかと思います(小並感)*1。
- 作者: 秋草俊一郎
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書きなおすナボコフ、読みなおすナボコフ Revising Nabokov Revising
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*1:もし執筆者が評さなくてはいけないようなら、そうした状況にしてしまっている研究(書)の閉塞性が問題視されるべきだと思います。