前回の内容(①書簡編)はこちら。
2回目は原稿の値段です。
原稿にかんしては多くが図書館などの機関に流れていて、一般に販売されるケースはまれです。
前回言及したグレン・ホロヴィッツ・ブックセラーは、戯曲『モルン氏の悲劇』の原稿を販売しているようです。
また、2010年6月2日にクリスティーズで、ナボコフのチェス・プロブレムの原稿が売りに出されていました。こちらは7500ポンドで落札されたものです(しかしこれ、はっきりしないですが、LoCで見た気がするなあ……)。
ほかにはちょっとしたノートや、修正の指示、インタヴューのゲラなどが売りに出されています。
しかし近年売りに出された中でもっとも大きなものは、『ローラのオリジナル』の原稿でしょう。この未完の長編の原稿は、インデックスカードのかたちのまま公刊されたことで話題になりましたが、まさに『ローラのオリジナル』のオリジナルのインデックスカードひとそろいです。
こちらは2010年11月23日におこなわれたクリスティーズのオークションで78050ポンドで販売されました。1200万円ぐらいでしょうか。
ただ、これは予想価格――estimate(£100,000 - £150,000)を下回る金額で売却されています。
実際のところ、出版された『ローラのオリジナル』には、このインデックスカードがコピーされて、すべて収録されていますから、資料的価値はゼロですよね。
となると、こちらの『ルージン・ディフェンス』の妻あての一冊に添えた仏語版校正用カードとか(10625ポンドで2008年11月27日に落札)、
こっちのおそらく『アーダ』作業中に使ったと思われる『青白い炎』第二版の書きこみありの版とかのほうが見てみたいですね。実際後者は2002年10月11日ながら26290ドルで落札されています。ただ、こうなってくると原稿というよりはinscribed copyになってきます。(つづく)